相続と破産の問題

破産手続をとると一定以上の価値がある財産については原則として処分されることになります。

破産を検討している人の多くは、そうした財産はすでに手放した後ということが多いですし、まだ残っている場合も手放すことを覚悟しているのが普通かと思います。

ところで、ここでいう財産というのは破産手続開始決定時点での財産となります。
破産手続開始決定は、申立後の早い段階で出されるものではありますが(特に東京地裁では1,2週間以内に出されます。)、破産手続の依頼から申立てまでには費用の準備や資料の準備で、ある程度時間がかかるのが通常です。

そうすると、しばしば生じる問題が、破産の準備中に両親等が亡くなってしまい、自身が相続人になるというケースです。

特段相続する財産がないような場合は問題ありませんが、自宅を所有していた場合などは悩ましいところです。
そのまま相続した場合に、財産>負債となるのであれば、そもそも破産する必要はなくなるでしょう。
財産<負債であっても、破産までしなくてよくなるという状況もあると思います。

相続したとしてもどのみち破産を進めるという場合、“どのみち処分されてしまうのであれば他の相続人に財産を譲りたい”という発想もあるかと思います。
しかし、自分は受け取らないという形で遺産分割協議をしてしまうと、自らの財産をみすみす減らしたということで後々否認権行使の対象となり、大きな問題となります。

一方、相続放棄をする場合は否認権講師の対象とならないとされています。
理屈としては、相続放棄は“身分に関する行為”であり、財産権を目的とする行為ではないから、ということになります。

破産準備中に自信が相続人となる事態が生じた場合には、以上を踏まえて検討することが必要です。
相続放棄は期限もありますので、速やかに弁護士に相談するようにしましょう。