法人破産における費用の準備

個人の破産を申し立てる場合の費用(破産手続に要する費用や弁護士費用など)については、一括で準備することができなくても分割払いで準備することが珍しくありません。

勤務先から毎月給与を受け取っている方は、破産するからといってそれ以後給与の支払いを受けられなくなるわけではありませんから、給与の中から分割で費用の支払いをしていけばいいわけです。

他方で、法人破産の場合は同じような費用の準備の仕方をすることが難しいです。

なぜなら、法人が破産することを対外的に表明した後は、基本的に事業をすることができないため、分割で支払うための収入が入る見込みが立たないからです。

したがって、完全にお金が尽きた状態になってから法人破産をしようと決意した場合、個人の破産以上に諸々の費用の準備が難しくなってしまうことがあります(個人の破産と比べて法人の破産は一般的に費用が高いということも念頭に入れないといけません。)。

弁護士への相談は早めの方がいいというのは、破産に限らずあらゆる分野で謳われていますが、法人破産の場合はより一層その要請が強いと思います。

弁護士に相談する=破産する ではないので、この先どのような選択肢があるのかを確認するためにも、あらゆる可能性を想定して早め早めのご相談をおすすめいたします。

1,2か月だけ返済を待ってほしいとき

今後一切返済ができないわけではなく、1,2か月だけ待ってくれれば返済を再開できるので、少しだけ待ってほしいという意向をお持ちの方から相談を受けることがあります。

体調不良などで勤務日数が極端に減ってしまったなどの理由でこのような状況に陥ってしまうことは珍しくない印象です。

1,2か月遅れても借入先がそれでいいと言ってくれるなら構わないわけですが、なかなかそう簡単にはいかないのが実情でしょう。

そこで弁護士に依頼して交渉するということになるのですが、このような場合でも弁護士が介入して返済条件を変更する以上は任意整理という手続を行うことになります。

任意整理をする場合、ひとまず返済は待ってもらって、一定期間弁護士費用の積立の期間があります。

例えば4か月かけて弁護士費用を積み立てて、着手金分がたまったら任意整理の交渉に移るという形です。

すると、任意整理をする場合はいずれにしても着手金の準備をしている期間は返済を待ってもらうことになりますので、今回の例でいうとわざわざ“1,2か月待ってください”と言う必要もないことになります。

余裕をもって弁護士費用の積立を行い、返済に充てるお金もある程度余裕をもって確保できる状況になってから返済を再開する内容にすれば、その後また同じ状況に陥ることを防ぐことにもなります。

もちろん、利息のことなどを考えれば早めに返済を再開した方がいい面もありますが、返済を継続していくという観点から考えれば、返済の再開時期はよく考えて決めるべきでしょう。

自己破産と財産隠しの問題

自己破産すると原則として財産を残すことができません。

しかし、これは例えば自宅に人が押しかけてきて財産を強制的に取り上げるということではありません。

基本的には保有している財産に何があるのかを自己申告し、その中から破産管財人が処分する必要があるものについて財産を引き渡すという形で行われます。

つまり、どのような財産を保有しているのかは自己申告による確認が原則ということになるので、“言わなければバレないのではないか”と考える人もいるようです。

しかし、自己破産の申立てでは源泉徴収票や確定申告書等の収入に関する書類、銀行通帳なども提出する必要があります。

たとえば銀行通帳の取引履歴の中に内容のよくわからないものがあれば説明を求められますし、収入に対応する支出が通帳からわからなければやはり説明を求められます。

財産隠しをしようとしても、これら提出資料を精査する中で隠し財産があることは露見します。

財産隠しは免責不許可事由に該当するため、借金の返済義務がなくならないという結果になることもあり得ます。

自己破産すると決めたのであれば、弁護士に対して包み隠さずすべての情報を伝え、真摯に手続を行う姿勢が求められます。

2回目の任意整理

一度任意整理したものの、再度支払いが難しくなってしまったというご相談を受けることがあります。

自己破産や個人再生に切り替えることも多いのですが、1,2か月だけ返済が難しく、それ以降はまた返済できる見込みがあるといった状況の方もしばしばおられるので、その場合は2回目の任意整理をすることになります。

最初の任意整理はいいけど2回目の任意整理は応じない、といった対応をされた経験はないですが、同じ弁護士からの再度の任意整理には応じないとする会社はあります。

しかし、この場合も別の弁護士からの任意整理の求めであれば応じるはずですので、1度任意整理しているからといって2回目の任意整理ができないと考える必要はありません。

任意整理はあくまで債権者へのお願いの手続ですので、初回の任意整理よりもこちらに有利な条件を相手が受け入れてくれることは期待しない方がいいでしょう。

しかし、初回と同等の条件であれば応じてくれることが多い印象です。

完済できる見込みが立たないにもかかわらず何度も任意整理することは避けるべきですが、任意整理で途中まで頑張ってきたのできちんと払いたいという意向をお持ちの方も多く見受けられます。

どの選択をしたらいいか、考えるお手伝いができればと思いますので、お困りの方はご相談ください。

裁判所へ行くことについて

弁護士=裁判というイメージがあるためか、弁護士に依頼すると裁判所に行かなければいけないのかという質問を受けることがあります。

裁判所に対する畏怖があるからこその質問かもしれませんが、まず裁判所は恐れを抱くような場所ではないのでその点はご安心いただきたいところです。

また、そもそも弁護士に依頼したとして裁判所に行くことは稀です。

債務整理手続の中でも自己破産や個人再生といった手続は、裁判所を利用した法的手続と呼ばれますが、法的手続であっても個人再生で裁判所に行くケースはほとんどないです。

東京地裁で個人再生を申し立てる場合は、再生委員が選任されるため、再生委員との面談に行く必要はあるものの、裁判所に行く機会は通常ないのです。

他方で、自己破産の場合は同時廃止であっても管財手続であっても1度は裁判所に行くことになります。

この点は裁判所ごとに運用が違うこともありますが、東京地裁では同時廃止の場合免責審尋期日、管財手続の場合債権者集会にあたって裁判所へ行くことが求められます。

もっとも、裁判所に行くといっても何か難しい対応をしなければならないわけではなく、聞かれたことに対して回答すれば大丈夫ですし、場合によっては発言の機会自体がないこともあります。

個人事業主の自己破産は同時廃止にならない?

自己破産をしたときに同時廃止となるのか管財手続となるのかは、費用の面からも気にされる方が多いです。

両手続の区分けは諸々の事情を考慮して行われますが、事業をされている方の場合だと管財手続になるのが原則です。

もっとも、事業をしているといっても、人を雇用するなどして手広く事業を取り扱っているケースもあれば、特定の会社からのみ受注しているだけで実質的には雇用されているのと変わらない形で事業をしているケースもあります。

この例でいうと、前者のような事業者が自己破産する場合は管財手続になるでしょう。

他方で、後者のような個人事業主で、事業に利用している事務所や什器、在庫商品などがないということであれば、同時廃止手続になる可能性もあります。

最近では東京などの都市部では、ウーバーイーツなどフードデリバリーで生計を立てている方も多いですが、この場合在庫商品などもないでしょうし、事業におけるお金の流れもシンプルですので同時廃止手続で進められる可能性もあると考えられます。

また、会社の都合で雇用ではなく業務委託契約で働いている方もいるかと思いますが、実質的には給与所得者と変わらないということで同時廃止手続となる可能性があると考えられます。

ビジネス・コート

令和4年10月から東京地裁のビジネス・コートが開庁します。

要はこれまで霞が関の裁判所にあった東京地裁の機能のうち、一部をビジネス・コートに移転するということになります。

ビジネス・コートがあるのは中目黒ですので、霞が関の近所への引っ越しというわけでもなく、わりと大規模な移転という感じですね。

ビジネスという名前である以上、一般の個人の方からすればあまり関係ないと思われるかもしれませんが、倒産部全体が中目黒に移転するため、個人の破産や再生手続もこのビジネス・コートで行われることになります。

特に破産手続では、免責審尋や債権者集会といった手続で裁判所に行く必要がありますので、場所を間違えないように注意が必要ですね(裁判所といえば霞が関というイメージがあるかもしれませんし、従来の霞が関庁舎がなくなるわけではないため、単に「東京地裁」と検索してしまうと霞が関へ案内されてしまうでしょうから。)。

弁護士としても、霞が関庁舎へ行くのと中目黒の庁舎に行くのとでは所要時間がだいぶ変わってきますので、これまでの感覚で前後の日程を入れてしまうと予定の時間に間に合わないということになりかねないので、注意しないといけないなと感じています。

債権者集会には債権者が来る?

東京地裁では、コロナ禍以降、特に必要がなければ債権者集会に破産者や破産者代理人の出頭を求めないという運用がとられてきました。

最近になって、通常通り出頭を求める運用に戻ってきているのですが、債権者集会とは何なのか、そこで債権者から問い詰められたりするのか、といったことが気になる方も多いようです。

債権者集会は、その名前のとおり債権者が出席することのできる手続ではあるものの、個人の方が破産する場合にわざわざ貸金業者が債権者集会に参加するということは通常ありません。

ですので、貸金業者以外から借入れがある場合や、事業資金の借入れがある場合は別として、個人の自己破産手続の場合の債権者集会は、債権者が誰も出席していないというのがむしろ普通です。
裁判官と破産管財人、破産者、破産者代理人が出席して淡々と手続が行われます。
特に問題となる点がないケースだと、簡単な確認をするだけで、ほんの数分で債権者集会が終わることも珍しくありません。

債権者に対する申し訳なさの気持ちを持たなくていいとは言いませんが、債権者集会という言葉の印象から受けるイメージと実際の手続はだいぶ異なっていると思いますので、これを過度に恐れる必要はないです。

給与所得者再生について

個人が民事再生手続を行う場合、小規模個人再生と給与所得者再生の2種類がありますが、ほとんどのケースで小規模個人再生が利用されています。

その理由はいくつか考えられるものの、最大の理由は可処分所得の2年分が最低弁済額の基準になるという点でしょう。

小規模個人再生だと、総債務額を基準に計算される金額、清算価値のどちらか高い方の金額を返済すればよいということになりますが、給与所得者再生だとこれに加えて可処分所得の2年分という基準があります。

可処分所得はその人の収入、家族構成等により自動的に計算されることになりますが、特に1人暮らしだったり共働きで子供がいなかったりすると比較的高額になりやすく、その場合に給与所得者再生をしても借金が減らないという結果になることもあり、これが給与所得者再生を避ける理由になっています。

しかし、逆に言えば、扶養家族が多い方だと可処分所得が低額になることも少なくありません。

この場合には給与所得者再生を利用しても、小規模個人再生と同額を返済すればよいということになります(可処分所得が少ないのに返済していけるのか、という問題は生じますが。)。

給与所得者再生は、小規模個人再生と異なり各債権者の再生計画への賛否にかかわらず成立させることができる点で強力な手続です。

こうしたメリットがあることを考えると、もう少し給与所得者再生の利用数が多くてもおかしくないのにな、ということは感じます。

詳しくは弁護士法人心へご相談ください。

奨学金の借入れがある場合の債務整理

債務整理を行うにあたって、必ず確認するのが保証人の有無です。

保証人がついている借入れについて、弁護士から債務整理をする旨の連絡をすると、債権者は保証人に対して支払いを求めてきます。

保証人がすでに借金の状況を把握している場合は別として、保証人に請求が飛び火してしまうのを避けたいという要望は多いです。

そのため、保証人がついている借入れについて債務整理の対象から外すことができる任意整理という手続をとることが多くなります。

ところで、クレジットカードでの買い物や消費者金融からの借入れについて、保証人がついているということはあまりありません。

保証人がついている借入れとして最も一般的なのが奨学金ではないかと思います。

奨学金の借入れにあたっては、親族等の保証人を立てるか、機関保証の利用を求められます。

このとき、親族等の保証人を立てる方を選んだ場合は上記問題が生じます。

他方で、機関保証を選択している場合は、“債務整理の事実を身近な保証人に知られてしまう”という問題を避けることができるので、自己破産や個人再生といった手続を選ぶことへの障害がないという事実上の違いがあります。

過払金が発生する条件

テレビCMや新聞広告などで過払金という言葉を見聞きしたことがあると思いますが、

それらの広告では、どのような条件を満たしていると過払金が発生するのかについてあまり言及されておらず、

借入れを行ったり、クレジットカードを利用したことがあったりする人ならば、誰でも過払金が発生している可能性があるといった内容で宣伝がされています。

おそらく、まずは問い合わせをしてほしいということもあるでしょうし、事細かに過払金が発生する条件を広告で説明することは難しいことから、

あえて細かな条件について触れていないものと思われますが、少なくともこれを満たしている必要があるという部分を簡単に記せればと思います。

1 ショッピングの利用では過払い金は出ない

クレジットカードでも過払金が出る可能性がある、という広告が多々あるため、しばしば生じる誤解ですが、

過払金が発生する可能性がある取引は、キャッシングの利用分に限られます。

したがって、クレジットカードを利用したキャッシングであれば過払金の生じる余地がありますが、

ショッピングの利用で過払金が発生することはありません。

2 おおむね平成19年(2007年)頃までに借入れを開始している必要がある

ほとんどの会社が、おおむね平成19年頃に利息制限法の範囲内の利率に変更しているので、

平成19年中までに借入れを始めているかどうかが過払金の発生を左右するポイントとなります。

3 銀行からの借入れに過払金は発生しない

銀行や信用金庫といったところは、古い貸付けであっても法律の範囲内の利率で貸付けを行っているため、過払金はありません。

4 時効の問題

時効の計算方法も、複雑な論点の多いところですが、少なくとも最終返済日から10年が経過していると、過払金が発生していたとしても時効が成立してしまう可能性が高いです。

その他にも多々条件はありますので、ご自身で判断がつかない場合は弁護士に相談してみるとよいでしょう。

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家族に秘密で個人再生や自己破産は可能?

家族に知られることなく債務整理を行えるか、という質問は非常に多く、

また、ネット上にある情報でもこの点に関心が高いということがうかがわれます。

債務整理手続の中でも任意整理については、秘密で行うことができるという答えでほぼ固まっていると思いますが、

個人再生や自己破産については、どちらの見解も存在するように思えます。

個人再生や自己破産の場合に回答が難しいのは、まず裁判所によって必要な書類が微妙に異なることが原因としてあります。

例えば、裁判所への申立ての際に、申し立てる本人の収入や財産状況について資料を提出するのはもちろんなのですが、配偶者についてどの程度資料を求めるかは裁判所によって異なるのです。

比較的多くの資料を求める裁判所の場合だと、配偶者に秘密で進めることは事実上難しくなってきますし、逆の場合は秘密で進めることも可能な場合があります。

東京地裁の場合、申立て時点で求められる資料はそこまで細かくないため、実際にご家族に秘密で手続を進められたケースもあります。

もっとも、結果的に秘密で進められることはあるかもしれないですが、申立後に追加で配偶者に関する資料を提出するよう求められることもありますし、今後の生活の再建ということを考えるとそもそもご家族の協力があった方がいいのではないかという考え方もあります。

そのため、家族に秘密で個人再生や自己破産をすることもできるかもしれないですが、秘密で進めることを条件として弁護士に依頼することは難しいのではないかという感覚があります。

相続財産がないかどうかの確認

自己破産や個人再生といった手続をするにあたり、自分がいまどれだけ資産を有しているかを明らかにする必要があります。

価値のある財産についてはすでに売却等しているケースも多いかと思いますが、思わぬ落とし穴となり得るのが相続財産の問題です。

その中でも、特に不動産は元の持ち主が亡くなった後きちんと権利関係を決めていないことなどもあるので、

法的に権利を有しているにもかかわらず、それを当人がはっきりと自覚していないということもあります。

例えば、親がすでに亡くなっている場合であるとか、親が亡くなった後にその親(祖父母)が亡くなった場合に、

亡くなった方の所有していた不動産にその配偶者等が現在も住み続けているような状況だと、

なんとなくその不動産は今住んでいる人の所有になったんだなという気がします。

ただ、上記のケースでは子(孫)である本人も法定相続人になるので、

きちんと手続をとっていなければ子(孫)も持分を有しているということになります。

したがって、それを認識しないままに破産の手続をとろうとすると、

この不動産を売却しなければいけないというような話にもなりかねず、思わぬところへ影響が出るということになってしまうのです。

破産や再生の手続をとるにあたっては、このような状況になることがないように、

自分が相続人となり得る続柄の方が亡くなったことがないかどうか、今一度確認しておく必要があります。

弁護士としても、本人に「相続財産はありませんか?」とだけ聞くのではなく、

その人が相続人となるような続柄の方が亡くなっていないかを確認するように心がけています。

自由財産として認められる現金

自己破産についてネットで調べると、「自由財産」という言葉が目に入ると思います。

自由財産は、破産手続を行った後でも破産者の手元に残しておくことができる

つまり破産手続の中で処分されずに、その後の生活に利用することができる財産になります。

 

なぜ自由財産が認められるかというと、簡潔に言ってしまえば

破産したからといってもちろんその後の生活がなくなるわけではなく、

生活をしていくため、立て直していくために一定のお金がかかりますので、

一定の範囲で破産者の手元に残すことを認めているわけです。

 

自由財産というワードとともに書かれることが多いのが、「99万円までの現金は自由財産になる」というものです。

99万円という数字の根拠についてはここでは詳述しませんが、基本的に99万円までの現金であれば手元に残すことができるということになります。

ただ、ここでいう「現金」には注意が必要です。

 

日常生活の中で、現金と銀行等への預金を区別することはあまりないかと思います。

どちらも使おうと思えばすぐに使うことができるお金という意味では同じという認識が根底にあるからでしょう。

しかし、東京地裁における運用では、99万円までの現金とは文字通り「現金」である必要があります。

預金に99万円預け入れた状態で破産の申立てを行った場合、それは現金が99万円あることにはならないのです。

 

手元に現金として99万円を保持している人は普通いないと思いますので、

このような運用は実社会の常識とは離れているようにも感じられますが(東京以外の裁判所で、預金も現金と同等に評価する運用がされている裁判所もあります。)、

現時点での運用は上記のとおりなので注意が必要です。

 

住宅の価値

賃貸がいいのか持ち家がいいのか、というテーマは昔から語られているところですが、

いまだに明確な答えはなく、最終的には個人の考え方次第という玉虫色の締め方になることが多いように思います。

 

もっとも、この問題についてはどこに住むことを前提にするかという点も重要なのかなと感じます。

例えば、弁護士の行う債務整理手続の1つに個人再生という手続があるのですが、これを行うかどうかの判断にあたり、

住宅価値を査定することがあります。

基本的に地方で住宅を購入する場合、基本的には購入時を頂点として、住宅価値は時間の経過とともに右肩下がりとなるのですが、

東京あるいは首都圏に含まれる地域では、住宅価値があまり下がらず、場合によっては購入時よりも価値が増しているということがあります。

 

実は個人再生を行う場合は、住宅価値が下がっている方が都合がよかったりもするのですが、

それはさておき、東京で住宅を購入する場合、購入価格は高いかもしれませんが、

住宅価値が落ちないのであれば、支払ったお金が住宅という資産に形を変えているだけで、

その人の財産は減っていないということができそうです。

賃貸の場合、支払った賃料の分、その人の財産が減るということになるので、

両者を比較するときはその点を吟味する必要があるだろうなと感じます(もちろん、住宅を購入する場合、各種税金や維持費がかかりますし、住宅価値が高いほどこれらも高額になる傾向にあるので、やっぱり比較は難しいということになるのですが。)。

コロナによる裁判所への影響

新型コロナウイルスが猛威を振るい始めてから早1年以上が経過しましたが、弁護士の業務にも多々影響が生じました。

とはいえ、法律相談を行ったり、ご契約をいただいたりといったことは、緊急事態宣言中も工夫をして行うことができておりましたので、

特に影響が大きかったのは裁判所の問題かもしれません。

 

あまり報道されることが多くないので、知らない方も多いかもしれませんが、最初の緊急事態宣言以降、裁判所の事件処理にも大きな変化がありました。

たとえば、東京地裁でいうと、係属している案件について、緊急性のないものについては基本的に期日が延期されました。

また、宣言期間中に訴状が提出された場合、すぐには初回期日が決まらないという状態が続き、部によっては2~3か月初回期日が決まらないということもありました。

 

加えて、本来であれば裁判所に出向くことが求められる手続について、出来る限りそれを不要とするようになりました。

たとえば、自己破産の手続を行う場合、東京地裁では申立直後にまず申立代理人の弁護士が裁判官と面談を行うことになるのですが(即日面接)、

対面方式ではなく電話面接の方式がとられるようになりました(現在でもその運用が継続しています。)。

また、破産手続が進んで最後に行われることになる免責審尋や債権者集会については、申立人本人が裁判所に出頭する必要があるのですが、

これについても原則不要という運用になりました。

 

裁判所へ出向くことをどこまで減らすべきなのかについては議論のあるところだと思いますが、

通常であればなかなか運用を変えることがない裁判所ですので、

コロナをきっかけにというのもなんですが、より使いやすい機関になってほしいと思います。

弁護士による方針の違い

花粉症の季節となってきましたが、幸か不幸かコロナの影響で常にマスクを着けているため

例年よりも自然と予防ができていて、症状が少ないのではないか…などと感じている今日この頃です。

今回は弁護士によって言うことが違うということはあるのかについてお話しします。

 

同じ問題を解決する場合でも、弁護士によって方針はまちまちだということはあり得ます。

これは別に、その中のどれかが正解で、ほかの選択肢が間違っているということではなく、

弁護士の考え方などによって勧めてくる内容が変わってくるのです。

 

法律相談をしていると、しばしば「どこの弁護士さんに相談しても同じことを言われますよね?」という質問を受けるのですが、

上述のような次第なので、けっこう変わってくるのではないかと思います。

特に債務整理のご相談などは、とり得る選択肢が複数あるという状況が起きやすいため、

おすすめの方針が事務所によって変わるということが少なくないです。

 

東京のような大都市だと弁護士の数も多いですし、また、今は電話での相談に応じている事務所も多いので

複数の事務所に話を聞いてみるといいでしょう。

特に、最初に話した弁護士とのやり取りの中で、ご自身の考えと合致しない点があったりした場合はなおさらです。

いくつかの事務所の話を聞いてみたうえで、方向性が同じである弁護士にいらすることで

以後の快適さも全く変わってくるかと思います。

管財か同時廃止か2

前回の続きで,管財事件と同時廃止手続の振り分けについて書きたいと思います。

管財事件が原則で,同時廃止手続は例外という立て付けであることを前回は書かせていただきました。

では,具体的にどういう場合に管財事件になるのかということですが,まずは管財費用を捻出できるだけの資産(20万円)があるのかどうかで区分けされます。

破産申立時点で預金通帳に20万円以上残っていたり,生命保険を解約した場合の返戻金が20万円以上あったりすると,管財事件となるわけです。

もっとも,今は多少資産があるけれども,これから依頼する弁護士に費用を払うことを考えると,そんなに資産は残っていないというようなこともあるかと思います。

ですので,このあたりの正確な計算は弁護士に相談して確認することが必須です。

次に,資産の問題をクリアしたとして,出てくる問題は免責不許可となる可能性の有無です。

破産して免責許可を受けるためには(借金が0となるためには),免責不許可事由に該当しないことが求められます。

免責不許可事由はいくつかありますが,代表的なものは,借金の理由がギャンブルや投資,浪費というケースです。

これに該当するおそれがあると,免責許可をしていいかどうかの検討が必要となるため,管財事件となる可能性が高いです。

さらに,自己申告ではこれらの基準をクリアしていたとしても,

本当に他に資産がないのか調査が必要とされたり,借金の額が多額なため,借入経緯に問題がなかったか調査をする必要が出たりなどの理由で

同時廃止手続ではなく管財事件となることもあります。

このあたりについては,申立代理人である弁護士が事前に依頼者の財産状況等を綿密に調査することで,

追加調査の必要はないという方向に(同時廃止手続で大丈夫だという方向に)働きかけることもできる部分です。

もっとも,最終的には裁判官がどう判断するか,ということなので,同時廃止手続が見込まれるケースでも,

“絶対に同時廃止になる”というような認識ではいない方がいいでしょう。

管財か同時廃止か1

自己破産の申立を行うと,管財事件になるか同時廃止手続になるかの振り分けがなされることになります。

簡単に言ってしまえば,管財事件は少し複雑な手続であり,同時廃止手続は比較的簡単な手続ということになります。

管財事件になると,裁判所から破産管財人の弁護士が選任されるのですが,破産管財人も無償でそのお仕事をするわけではありません。

では,だれがその報酬を支払うのかというと,破産管財人の報酬は破産を申し立てた人が負担しなければなりません。

ですので,同時廃止手続と比べて,管財事件となると少なくとも20万円以上多く費用がかかってくることになるのです。

「できるだけ手続にかかる費用を下げたい」というのは誰もが考えることですから,管財事件になるか同時廃止になるかという点は弁護士がよく質問を受ける部分です。

ただ,まず気を付けねばならない点は,破産制度の原則は管財事件であり,例外的に同時廃止という手続があるのだということです。

つまり,本来はすべてのケースで破産管財人をつけて手続を進めなければならないのだけれども,

破産管財人の報酬を払うことも難しく,免責していいかどうか(借金を0にして良いかどうか)という点で特に追加の調査をする必要もない等

例外的な場合に限って,簡潔な手続である同時廃止手続が選択される可能性があるということになります。

「管財事件なんてとんでもない大ごと」と考えている方もしばしばいらっしゃいますが,そうではないということを覚えておいていただければと思います。

相続放棄か債務整理か

ご両親や配偶者の方が亡くなり,実はその亡くなった方に借金があった,という話はよくあります。

借金については相続しなければいい(相続放棄すればいい)ということを,テレビなどの情報で知っている方も多いかと思います。

 

ただ,借金があった=相続放棄すればいいと短絡的に考えすぎると,思わぬことになりかねません。

典型的なのは,その亡くなった方がマイホームを持っていた場合ですが,借金があるといっても,資産全体で見ればプラスという場合には,

基本的に相続放棄せずに相続したほうが経済的に有利なわけです。

特に東京圏などの不動産価値が高い場所の場合,消費者金融で数百万円の借金があったとしても,住宅価値がそれを大きく上回ることがほとんどでしょう。

 

すると,相続放棄せずに相続を行うという選択になるわけですが,住宅の所有権を得るのと同時にやはり借金も相続することになります。

家を売るという選択ができる状況の方であれば,家を売却し,その売却価格から借金を一括で払ってしまえばいいかと思いますが,

その家を売ってしまうと自分の住む場所がないという状況の場合は,そう簡単に家を売却するという選択は採りにくいと思います。

 

このような場合に,借金を返済していくことが難しそうであれば,任意整理するという手があります。

自身で借金をしたことがない方にとってはまったく聞いたことがないということも多いと思いますが,

任意整理とは,要するに借金を今後どう支払っていくかについて,債権者と交渉する手続です。

これを行うことで,住宅を売ることなく借金の返済を行えることもありますので,

相続放棄すべきなのか,という問題に直面した方は,いずれにしても弁護士に一度お問い合わせいただくのがよいかと思います。