尋問手続

裁判という言葉からイメージするものが,弁護士から尋問されている映像だという人は多いかと思います。

たしかに裁判の中で一番裁判らしい手続なのが尋問手続かなぁという気がします。

 

もっとも,裁判を行った人すべてが尋問を経験するのかというとそうではないですし,

なんなら尋問手続を行うのはごく一部の裁判だといっても過言ではありません。

 

裁判の種類にもよってきますが,基本的に裁判は書面による主張の応酬であり,

双方の主張が出尽くした段階で,和解が試みられることが多いです。

ここで和解が成立すれば裁判はそこで終わるわけですが,

和解が成立しないと,裁判官の判決に向けて話が進んでいきます。

そして,判決に進んでいく場合は,判決の前に尋問手続が行われることがあるのです。

 

幸か不幸か尋問されることになったという方は,大変緊張するかと思います。

しかし,ひとつ安心してほしいのは,尋問手続によって裁判の結果が決まるのではないということです。

もちろん,尋問でどんな話をしたかということも大事ですが,

そもそも双方の主張はその時点で書面により提出されているわけです。

ですから,訴訟当事者の方が尋問を受ける場合,その方が何を訴えたいのかは基本的にみんなわかっていますので,

尋問で一からすべてを話さなきゃいけない,と考える必要はありません。

 

逆に何が聞かれる(見られている)のかというと,これまでの主張と,尋問される方の話す内容が整合的かどうかといった点です。

これまでAという事実を主張していた方が,急にBという事実を主張をしたり,あるいはAという事実を前提としたら起きえない事実を述べたりすると,

Aという事実があったかどうかは非常に疑わしくなります。

きちんと記憶のとおりそれまでの裁判で主張してきたのであれば,尋問でもその記憶どおりに話しさえすれば,特に問題はないはずです。

 

ここまでの内容でも少しわかるかと思いますが,尋問は加点というより減点の視点で見られることがあるかもしれません。

つまり,尋問でいいことを言ったから有利になるというよりは,これまでの主張と矛盾しなければマイナスなしで,

矛盾することを言っていると信用が下がる(マイナスになる)という感じです。

 

尋問されることになった方は緊張すると思いますが,自分の記憶どおりに話していれば特に問題はないんだと思っていれば,

少しは気が楽になるのではないかと思います。

2020年の始まり

2010年代が終わり,2020年代が始まりました。

年をとるごとに時間の経ち方が早くなっていくとはよく言われますが,

本当にいつの間に2010年代の10年間が過ぎ去ったのだろうという感覚です。

2020年代は充実していたと胸を張って言えるような10年間にしていきたいと思います。

 

今年は何といっても東京オリンピックですね。

試合を見るという方はもちろんですが,残念ながらチケットに落選してしまったという方であっても,

街中でオリンピックを感じることは多々あるのではないかと思っています。

弊所は東京駅のすぐ近くですし,私もオリンピック競技が行われる会場から割と近いところに住んでいるので,

結構な頻度でオリンピックに関する非日常の雰囲気を味わえるのだろうと今から考えています。

 

なお,弁護士業界は,弁護士になるための最終試験であるいわゆる2回試験が11月に行われ,

その合格発表(不合格者発表)が12月になされる関係で,基本的に年末年始が新人弁護士のスタートになります。

ですので,新年の開始とほぼ時を同じくして,新人弁護士さんも裁判所などでちらほら見ることが増えてきます。

新人の目から見て,尊敬できる存在になれるよう,改めて気を付けようと思います。

裁判官は判決よりも和解で終わらせたい?

以前このブログでも書いたかもしれませんが,裁判=判決ではありません。

おそらく,「裁判」という言葉から多くの方が「勝訴」とか『敗訴』という言葉を連想されるのではないかと思いますが,

裁判の終結の仕方は判決だけではなく,和解という終わり方があります。

 

「裁判官は判決を書きたがらない」という話を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

弁護士がそのように言っているのを聞いたことがあるという方もいらっしゃると思います。

実際に,裁判官が判決を書きたがらないかどうかはわかりませんが,

判決ではなく和解になるということが,悪いことだというわけでは決してありません。

 

和解は,双方がある程度譲歩することによって成立するもので,判決よりもある程度柔軟な内容にすることが可能です。

判決だと白か黒かはっきりせざるを得ない部分についても,和解だと,場合によっては中間的な内容になることもあり得ます。

すると,判決だと“もしかすると全面的に負けてしまうかもしれない”ものについても,和解だと“多少は認めてもらえた”ということが起こり得ます。

判決は,裁判官が一方的にくだすものであるのに対して,和解は当事者双方が自発的に受け入れる性質のものですので,

紛争の終わり方としても一応双方が「了承している」という点で,和解の方が判決よりも綺麗な終了だという見方もできるかと思います。

 

判決よりも和解の方が,という考えには,このような理由もあるのではないかと思います。

今弁護士を目指す人とは

以前にもブログで書いたかもしれませんが,司法試験の合格発表待ちの方々や,

晴れて司法試験に合格して,司法修習を間近に控えている方々の面接を担当させていただくことがあります。

司法試験受験者を網羅的に見ているわけではもちろんないので,

あくまで当法人の面接を受けていただいている方を見て,ということにはなりますが,

以前と比べて個性的なバックグラウンドをもっている方が多いような印象があります。

 

近年言われている,弁護士を取り巻く環境の厳しさもあり,それ相応の覚悟をしている人しか目指さなくなったからなのかなぁなどと思ったりもしますが,

実際のところはよくわかりません。笑

ただ,現在の司法試験受験生と少しでもかかわることで,そちらの業界が今どのような状況なのかということにわずかでも触れられる気がして,

個人的には少しうれしいです。

 

ちなみに,弁護士業界をはじめとした法曹界が,世間で言われているように厳しいのかどうかについて少し触れておくと,

私が弁護士になるよりずっと前の弁護士業界と比べて厳しいのは間違いないだろうと思いますが,

受験生時代に聞いたことのある,必要以上のネガティブキャンペーンほどには悪くないと思っています。

 

ですので,ぜひ,これまで以上にたくさんの人が司法試験を目指す状況が続いてほしいなと思います。

 

不動産の価値についての問題

東京オリンピックが来年に迫っていますが,

東京都内にお住まいの方は,「オリンピックが終わるまで不動産を買うのは待った方がいい」

なんて言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。

 

オリンピック後に本当に不動産価格が下がるのかどうかはわかりませんが,

東京の不動産価格は地方と比べ物にならない高さです(もちろん場所にもよりますが。)。

例えば,10年前に買った住宅が,むしろ現在の方が値上がりしている,なんていうことも少なくないですよね。

今高騰している住宅を昔買っていた人がうらやましいなあと思ってしまいますが,

実はこの話,弁護士にとっては債務整理手続,特に個人再生手続との関係で,大きなポイントになることがあります。

 

個人再生とは,簡単に言うと,現在の債務額を圧縮し(減額し),その圧縮された金額を分割払いで支払っていく…というのが基本的な流れです。

ただし,清算価値保障の原則があり,破産した場合よりも債権者に弁済する額(配当額)が少ないというのは認められません。

これは結局,住宅ローンが残っていても,実はその住宅の現在価値が住宅ローン残額を超えている場合,

超えた分については弁済を行わなければならないということになります(破産したらその住宅は売却され,残ローンを上回る部分については債権者に対して弁済されることになるため)。

 

先ほど述べたように,東京では買った時より今の方が価値が上がっているということが少なくないですし,

上がっていないにしても下がっていないということがしばしばあります。

たとえば,4000万円で買った家のローンが3000万円残っていたとしても,住宅の現在価値が5000万円になっていたら,

個人再生をしても,差額の2000万円は払わないといけないということになってしまいます。

多くの場合,これでは個人再生をする意味がないという結論になってしまうため,別の方策を探るということになるでしょう。

 

このように,東京都内でマイホームをもっている方の個人再生は,不動産価値の問題が重要になってきます。

資格試験

私は学生時代から資格試験を受けるのが好きだったのですが,

どうやら今年に入るまでそれを忘れていたようで,

とある試験を受けたことで,自分の“資格好き”の性格を思い出しました。

 

何の肩書きも持っていない小学生・中学生の頃に,

漢検や英検に合格すると,さほどそれが難しくない級だったとしても

妙にうれしかったのを今でも覚えています。

弁護士という“資格”が必要な仕事に就くこととなったのも,

もしかしたら元来のこのような性格が影響した面があるのかもしれません。

 

そんなこんなで,今年から気になった資格試験を時折受けてみたりしているのですが,

興味深いのは,受験者の年齢層についてです。

仕事にも役に立つのだろうと思われる,ビジネス系の資格については

やはり大学生~20代くらいの若いサラリーマンが多いですが,

趣味の要素が強い資格については本当にまちまちです。

 

特に驚いたのは,高校レベルで習う内容が出題される資格試験でした。

私としては,(自分もそうだったのですが)昔学んだ知識を再度取り戻そうという方や

今まさにそれを学習している高校生が受けに来るのかなぁと思っていたのですが,

明らかに小学生と思われる受験生が多数いました。

中学受験で出題される範囲でもなさそうだったので,彼らは本当に好きで勉強しているのかもしれません。

 

いずれにしても,こうした様々な頑張っている方を見ると,こっちも負けないぞという気持ちになってきます。

弁護士業務の研鑽と並行することで,気分転換にもなっていい循環だなと感じています。

携帯電話の分割払いと自己破産

自己破産をする場合,そのとき抱えている借金の相手(債権者)に対して,

自己破産手続をとることを通知することになります。

銀行や消費者金融からの借入れがある場合についてはイメージがつきやすいかと思いますが,

携帯電話については盲点となることが多いです。

 

今は携帯電話本体の代金が高額ですし,各社とも分割払いがお得だと宣伝していることもあり,

携帯電話本体の代金を分割払いで購入されている方が多いと思います。

しかし,携帯電話本体の分割払いも,借金の1つとカウントされることになります。

ですので,本体代金をまだ払い終わっていない方が自己破産をして免責許可の決定を受ける場合,

他の借金と合わせて,携帯電話本体の代金も払わなくてよいこととなります。

そうすると,携帯電話は強制解約となり,利用することはできなくなってしまうのです。

 

現代社会で携帯電話なしの生活というのは,現実的に難しいという方も多いと思います。

そのため,破産手続を開始する前に,プリペイド携帯に変更するなど

手続開始後も通信手段が残る状態にするという方法もあります。

 

携帯電話については,先ほども述べたように,

生活必需品となっている側面が強いことから,他の借金とは区別して考えるべきではないかという考え方もあるようです。

最も身近な借金ともいえる携帯電話の分割払いですが,

債務整理手続の場面では,かなり複雑な問題があります。

専門家でも判断が分かれることがある話なので,迷われたらぜひ弁護士にご相談いただくのがよいと思います。

 

 

なお,弊所のホームページ写真が更新されました。

http://www.kokoro-tokyo.com/

過払い金請求事件はもう終わり?

もうずいぶん前から,弁護士事務所のCMや電車内の広告,あるいはホームページなどで「過払い金」というワードが多々登場しているので,

多くの方がなんとなく“過払い金請求によりお金が返ってくることがあるらしい”ということはご存知かと思います。

また,何年か前からは「時効」という言葉が出てきたことをご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

 

時効という言葉を聞くと,「あぁ,もう過払い金請求はできないんだ」という気持ちになるかもしれませんが,

実際のところ,まだ少なからず過払い金請求事件は存在します。

多くのホームページで紹介されているので詳述は避けますが,過払い金はおおむね平成19年以前からお借入れがある場合に発生します。

そして,過払い金返還請求の時効は10年なのですが,この10年というのがどの時点を始点に考えるのかがポイントになります。

 

この問題について,細かいことを言えばさまざまな論点があるのですが(途中で完済したことがある場合など),

基本的に,お借入れを“完済したとき”が始点になります。

ですので,平成23年に完済したのであれば令和3年に時効ということになりますし,平成25年に完済したのであれば令和5年に時効ということになるのです。

 

平成19年以前から借り入れを開始して,完済したのが平成21年以降というケースは少なくないと思いますので,

過払い金請求が現在でも行えるという方は決して少なくないですし,現に現在も過払い金のご相談を受けることはしばしばあります。

「もしかしたら」と思った方は,一度弁護士に相談してみるといいでしょう。

東京で過払い金のご相談をお考えの方はこちら

どんな相手に対しても任意整理できる?

近頃どんどん暑さが増してきて,じめじめも加わり,いよいよ夏本番という感じですね。

夏風邪などひかぬよう,私も日々気をつけつつお仕事に邁進したいと思います。

 

今日は任意整理でよく聞かれる疑問について書きたいと思います。

弁護士に任意整理を依頼すると,月々の支払いが減ったり,将来利息がなくなったりといったメリットがある,ということはよく聞かれるところです。

ところで,これが認められる理由はどういったところにあるのでしょうか。

 

結論から言うと,法的な理由はないです。

あくまで,“債務者のお願いを債権者が受け入れてくれた”といった程度の話です。

つまり,債権者からすれば,債務者のお願いを聞いてあげる義務はないけれども,

破産や再生の手続をとられるよりは貸金の回収ができるので応じている,ということになります。

 

すると,任意整理によって,月々の支払いが減る,将来利息を支払わなくてよくなる,といった結果が出るかどうかは,

基本的に相手方の出方次第ということになります。

大手消費者金融などは,任意整理のお願いをされた際の方針を決めていますので,お願いする側としてもある程度目途が立ちます。

他方で,ごく一部の地域でのみ営業しているような小規模消費者金融などは,任意整理の対応を受け付けていないということも多いです。

つまり,法的に任意整理の相談に応じる義務はない以上,あくまで決められたとおりの金額の支払いを求めてくるということになります。

 

「ほかの会社は応じてくれているのにこの会社だけなんで!」という気持ちにもなってきますが,

法的に応じる義務はない以上,このような対応をしてくる会社があるのもある意味当然ではあります。

 

ですので,任意整理を検討する際には,借入額や月々の返済可能額だけでなく,借入先の会社がどこかということも大事になってきますので,

その点についてもご注意いただければと思います。

弁護士の仕事はデスクワーク?

弁護士の仕事のイメージは一般的にどのようなものでしょうか。

事件現場に行ったり依頼者や相手方のところへ訪問したり,あるいは裁判所に行ったりと

いろいろな場所へ動き回っているというものでしょうか。

それとも事務所でひたすらデスクワークというイメージでしょうか。

 

おそらくどちらの形で働いている弁護士もいるので一概には言えませんが,

ドラマなどで描かれる弁護士よりはデスクワークが多いのが通常かもしれません。

 

私も,東京の裁判所だけでなく,遠方の裁判所等に行くこともしばしばありますし,

その他にも時折事務所外に出る仕事がありますので,一般的な事務職の方と比べると動く機会は多いと思います。

ですが,やはり基本的にはデスクワークがメインの仕事だと思っています。

 

デスクワーク中心の仕事をしていると,どうしても運動不足になりがちですし,

姿勢が硬直的になるせいか,肩や背中,腰などに痛みや凝りが出てしまうなぁと実感します。

司法試験の勉強中も,椅子に座っていたことには変わりないはずなのに,

どういうわけかその時とは違う症状が出ています(年齢的な変化もあるのかもしれませんが…)。

 

このままではますます身体が大変なことになる!と思い,今年に入ってからスポーツクラブに入り,

週に1回でも2回でも,ちょっとずつ身体を動かすようにしました。

目に見えた変化はまだないものの,“自分は日頃まったく運動をしていないわけではない”と思えるだけで

罪悪感が減り,精神的にプラスになったように思います。

 

これからも身体には気を付けてお仕事をしていきたいものです。

内定者の研修

当法人では,近い将来弁護士として一緒にお仕事をすることとなる司法修習生の方々に対して,

内定者の段階から研修を行っています。

入所前から研修を行うことで,いざ実務が始まった時に最初から第一線で活躍できるように,という目的があるのはもちろんのこと,

内部の人間とこの時から交流をもつことで,双方にとって溶け込みやすい環境を作ることができていると思っています。

 

私もしばしばこの研修に内部の人間として参加する機会があり,先日も参加してきました。

いずれも明るく話好きな方々という感じで,私自身も楽しませていただいたと同時に,

彼ら彼女らがもつ将来に向けての期待・目標・ちょっとばかりの不安をひしひしと感じました。

 

司法試験という試験は,ほかの資格試験もそうだと思いますが,これに合格しただけでは,基本的に実際の仕事に対応することは難しいです。

そのために司法修習という期間があり,実務を目の前で見て,体感して,吸収するということになるのですが,

実際に働くことになる事務所で司法修習を行うわけではないので,やはり自分の行うことになる仕事については不明点も多く,

司法修習生は期待や不安の入り混じった気持ちになるのです。

 

彼ら彼女らが入所するときに頼れる先輩だと思ってもらえるよう,より一層経験を積んで知見を増やしていかねば,

と改めて思った次第です。

日弁連交通事故相談センター

以前このブログでも書いたことがあったかもしれませんが,

交通事故の示談を直接保険会社の担当者と話していてもうまくまとまらない場合,

次の選択肢が裁判しかない,というわけではありません。

ADRと呼ばれる裁判外紛争解決手続があります。

 

比較的知られているのは交通事故紛争処理センターの方でしょうか。

こちらは全国11か所にあり,間に立つ仲介役の弁護士が中立・公平の立場から和解がまとまるように導いてくれます。

 

これとは別に,交通事故の裁判外紛争解決手続を行う機関として,日弁連交通事故相談センターがあります。

こちらは全国に159箇所あり,やはり弁護士が間に立って同じように和解がまとまるように話を進めてくれます。

 

この2つがどう違うのかというと,まず,審査結果が拘束力を発揮する対象に違いがあります。

損保会社と一部の自動車共済に対して拘束力があるのは紛争処理センター,

特定の自動車共済に対して拘束力があるのは日弁連交通事故相談センターとなります。

ですので,基本的には相手の保険会社に対して拘束力があるのはどちらなのか,がまず大事です。

 

ただ,例えば損保会社を相手として日弁連交通事故相談センターが使えないというわけではないので,

どちらを使った方がいいかはきちんと考えた方がいいかもしれません。

 

間に立つ弁護士の進め方にもよりますが,一般的に日弁連交通事故相談センターの方が申立てから終了までが早い傾向があると思います。

ですので,特に争点がなく,(多額ではない)金額の争いであれば,日弁連交通事故相談センターを利用するのも手かもしれません。

 

時効の援用

2月も後半になり,東京では季節外れの暖かい日もしばしば出てくるなど,

もう寒さの峠は越えたという印象ですね。

私は非常に寒がりなので,早く暖かくなってくれると気分も晴れやかになります。

けど,もれなく花粉症も酷いタイプなので,そこは身構えないといけません。笑

 

今回書かせていただくのは,タイトルにありますように「時効の援用」です。

「時効」という言葉は誰もが一度は聞いたことがあるかと思います。

例えば,“消費者金融でお金を借りて,その後その消費者金融に返済を行っていたが,

まだ借金が残っているにもかかわらず,返済をストップしてしまった”というときに

そこから一定の期間(多くの場合は5年)が経過すると,「時効」を主張できる可能性があります。

時効は主張しないと効果が発生しません。

そして,時効を主張することを「時効の援用」といいます。

 

私は,実際に弁護士として仕事をするまで,

“時効を主張できるほど案件が放置されることなんて普通はないだろう”と思っていました。

せいぜい,個人間のやり取りでたまに存在するという程度で,いわゆる大手の消費者金融からの借金でそうしたことは起きないだろうと考えていました。

しかし,実際にはそうした大手消費者金融から借りたお金について,何年も取引がない状態が続いているということで,

時効を援用して解決するというケースがしばしばあります。

 

大会社に対するある種の思い込みみたいなものが私にあったのだと思いますが,

このような思考は一般的にも割とあるのではないかと思います。

ですので,この件に限らず,自分で結論を決めつけないことが大切だなと改めて感じています。

任意整理ができるかどうかの分岐点

債務整理手続をとるとなったときに,まず第一に検討するのは任意整理手続が可能かどうかということだと思います。

任意整理手続は,債権者各社との間で,支払っていくことができる金額での分割払いを交渉する手続です。

将来利息はカットしてくれることが多いので,それだけでもかなりトータルの支払額が減ることになりますが,

現在抱えている債務については基本的に減額されないということになります。

 

分割払いといってもやはりある程度の限度があります。

一般的に3年(36回)から5年(60回)程度の分割なら,ということで債権者が応じてくれることが多いです。

したがって,まずは現状抱えている債務総額を60で割ったときに,月々支払っていける金額の範囲内に収まっているかどうかが任意整理を行えるかどうかの目安になります。

 

月々の支払い可能額の範囲に収まっていないという場合,個人再生や破産といった手続を検討していくことになるわけですが,

どうしても任意整理以外の手続をとれない事情があるという場合もあります。

そうした場合には,どうにかして6年(72回)あるいは7年(84回)での分割を債権者に認めてもらわなければならないことになります。

債権者によっては,月々の収入額,支出の内訳等を具体的に伝えることで,その金額が月々に支払える限度であることを納得してもらい,

こうした長期分割に応じてくれることがあります。

他方で,会社として60回払いにしか応じないと決めている会社,あるいは36回払いにしか応じないと決めている会社もあります。

そうした会社が債権者となっている場合には,一般的な範囲を超えた長期での分割は難しくなってくるでしょう。

 

また,それまでの債権者との信頼関係も影響してくることがあります。

すでに滞納が相当程度長期になっている場合や,借入からの期間が浅く,信頼関係が構築されていない場合などは,

長期の分割に難色を示されることが多いです。

 

これらの様々な事情を踏まえ,弁護士はどの債務整理手続をすべきかの判断を行うことになります。

債務整理手続の種類と概略 その3

今年もいよいよ残りわずかとなり,すっかり冬らしくなりました。

弁護士という仕事柄,遠方の裁判所等に行くこともしばしばあるのですが,

この時期に北国へ行くと東京都の温度差に驚かされます。

北国の人たちにとってみればまだまだ寒くなるのはこれからということで,全然これぐらいの寒さはへっちゃらなのかなと思いきや

むしろ比較的早い時期からしっかり防寒具を着用しているなという印象もあるので,

北国の人たちは寒さに強いというよりは,寒さ対策がきっちりできているんだなぁなどと感じています。

さて,債務整理手続についてこれまで任意整理,個人再生とお話ししてきましたが,残る手続が破産手続となります。

破産という言葉は皆さん聞いたことがあるかと思いますが,任意整理,個人再生と違い,

借金を分割して支払うというのではなく,抱えている借金をすべてなくす手続になります。

このような強力な手続ですので,当然無制限に認められるというわけではありません。

破産手続のメリット・デメリットをそれぞれ挙げると,

まずメリットは当然債務から解放されることということになります。

他方,デメリットは,まず原則としてギャンブルや浪費によってできた借金については免責不許可事由となるので破産手続を選択しづらいということがあります。

また,破産をすると一定の職業に就けないことになりますので,例えば保険の外交員などを職業とされている場合はやはり選択しづらい手続となります。

加えて,破産手続は一部の借金に対してのみ行うなどはできないので,保証人がついている借金がある場合には破産手続によりその保証人に請求がいくこととなります。

ですので,保証人がついている借金がある場合にはその辺りの点についても十分考慮したうえで手続しなければなりません。

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債務整理手続の種類と概略 その2

11月に入り東京もすっかり秋めいてきました。

私は過ごしやすい気温の時期は少し離れた駅から歩いて通勤しているのですが,

それももうしばらくしたら終わってしまいそうです。

 

さて,前回は任意整理について簡単にご説明させていただきましたが,

今回は民事(個人)再生手続についてお話しさせていただきます。

 

再生手続は任意整理と違い,裁判所を用いた手続になります。

また,破産手続と違い,債務(借金)がゼロになるというわけではありません。

債務を圧縮(減額)し,その圧縮された借金を分割払いしていくという手続になります。

まさに任意整理と破産の間にあるような手続ですが,あえて破産ではなく再生手続を選ぶメリットとは何なのでしょうか。

 

破産は借金をゼロにする最後の手段ですが,破産することが許されないケースという類型が存在します。

例えば借金の原因がギャンブルだったり浪費だったりという場合には,免責不許可事由に該当します(裁量免責により破産できる場合もあります。)。

ですので,借金の原因次第では破産手続をとりにくいということがあります。

 

また,破産をしてしまうと一定の職種に就けないこととなるため,仕事を今後も継続するために破産手続をとり得ない方もいらっしゃいます。

 

さらに,再生手続は住宅を手放さずに住宅ローン以外の債務を対象に行える手続なので,

住宅を残したいという方にとって有用な手続となります。

 

以上が再生手続を選ぶメリットとなります。

いずれにしても,どの手段をとるべきかは弁護士に確認するのが確実でしょう。

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債務整理手続の種類と概略 その1

借金がかさんでしまい,もう家計が回らない…といったときに

弁護士へ相談してとり得る手続は,一般的に3つあるとされます。

1つは任意整理手続と呼ばれるもので,2つ目は民事再生手続,3つ目が破産手続です。

 

今回は任意整理手続とは何かについて少し書かせていただきます。

任意整理手続とは,その名のとおり各債権者と任意の交渉を行い,支払継続が可能な計画を立て,

以後それに従って返済を行っていくというものです。

 

任意整理手続のメリットとして挙げられるのは,あくまで「任意」の手続なので自由度が高く,

それぞれの債権者に対しどのような条件を提示して交渉するかも自由に決められるということがあります。

そもそも,一部の債権者は手続の対象に含まないなども可能です。

 

他方デメリットとして挙げられるのは,他の2つの手続と違い裁判所をとおすものではないので

強制力がないということがあります。

あくまで個々の債権者との「任意」の交渉なので,こちらの提案に債権者が同意するかどうかは債権者次第であり

返済計画がうまく成立しないということはあり得ます。

また,任意整理は原則として返済額を減らすものではないので,

ご収入(月々の返済可能額)や総債務額の関係で,任意整理手続をとることが難しい(返済計画が成り立たない)ということもあります。

 

民事再生,破産といった手続はどうしても抵抗があるという人も多く,

債務整理手続の中でまず最初に検討するのが任意整理ということが多いかと思います。

 

次回は民事再生について記載させていただく予定です。

むちうちの後遺障害 その2

前回,むちうちの後遺障害の有無は,事故に関連する各種事情により判断されることになるとお話しさせていただきました。

今回は,その各種事情とはたとえばどのようなものがあるのか,ということについて書かせていただきます。

 

まず,よく言われるのが通院の期間や回数です。

これは,長期間・多数回通院している以上,当然症状の程度が重いだろうと考えられることから,重要になってくるものです。

 

次に,事故の態様も大切になります。

これは,大きい事故であればあるほど,それによる怪我も大きいだろうと考えられることから,

後遺障害の有無を分ける要素になってくるものです。

例えば,歩行者や自転車対自動車の事故である場合,事故の衝撃が直接身体に加わっていることになりますので,

怪我の程度も大きいものと考えられやすいです。

また,自動車同士の事故である場合も,事故後の車両の損傷具合(一目で損傷していることが明らかな場合などは衝撃が強いと考えられやすいです。)などの事情が

後遺障害の判断に影響を与えます。

 

また,年齢も事実上影響することがあります。

これはどういうことかというと,「後遺障害」というからには,その後も基本的には症状が治らないことが認定の前提となるのですが,

若い方とご高齢の方を比較すると,ご高齢の方の方がその後の改善の見込みが低いと一般的に考えられるため,

若い方よりもご高齢の方の方が,後遺障害が認定される方向に傾きやすいということです。

特にはっきりと明言されているわけではないのですが,実務を取り扱っているとたしかにその傾向はあるように思います。

 

その他にもいろいろな事情が考慮されて,後遺障害の判断はなされることになりますが,

最終的にはそれらの事情を鑑みて,認定する側がどのように感じたかということになってきますので,

弁護士として日々取り扱っていても,やはりむちうちの後遺障害は複雑だなと感じます。

むちうちの後遺障害の認定 その1

交通事故で最も多いけがといっても過言ではないのが,いわゆる「むちうち」です。

むちうちと一言にいっても,その程度には差があり,ひどい場合には後遺障害に該当しうるということは,

インターネット上でも多くの弁護士事務所が書いていることかと思います。

 

しかし,基本的にむちうちという症状は,レントゲンやMRIといった,画像診断によって何かわかるというものではなく,

究極的には,痛みの有無・程度は本人にしかわからないものです。

そのため,後遺障害の認定を受けられるかどうかの境界線もどうしてもあいまいな部分が出てきます。

 

では,実際のところどのように認定を行っているのでしょう。

もし可能であるならば,痛みの程度を数値化して,いくつ以上を後遺障害に認定する,というようなことができればいいのでしょうが,

現実的にはそれができないため,結局その他の事情から症状の程度を推し量ることにより後遺障害の有無を判断することになるのです。

 

具体的にどのような事情が後遺障害認定の判断を左右することになるのかという点については,次回のブログにて綴らせていただきますが,

むちうちの後遺障害認定の特色は上記のとおりです。

 

つまり,例えば関節が曲がりにくくなったというのであれば,どの程度動かなくなったのかを角度で測ることができますし,

目が見えにくくなったというのであれば視力を測ることができます。

身体に傷が残ったという場合には,傷の大きさ・長さを測ることができます。

そのため,ある程度はっきりとした根拠に基づいて後遺障害の有無を考えられるのですが,

むちうちは症状を直接測ることができないので,各種事情により基本的に判断されることになるのです。

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主婦休損2

前回の続きで主婦の休業損害について書いていきます。

 

主婦休損に関する誤解で多いのが,主婦休損が専業主婦しかもらえないものだと考えているというものです。

昨今の社会事情では,主婦の方も何らかのお仕事をもたれている方が多数派だと思います。

そして,よく相談者の方からお聞きするのが,“パートを休まなかったから休業損害はもらえない”という言葉です。

 

一般的に,全女性の平均収入以下,1週間の労働時間が30時間以下といった基準で,主婦休損の対象となるかどうか判断されることが多いです。

パートの方で全女性の平均収入を超えることはあまりないかと思いますし,1週間で30時間というと平日毎日6時間勤務でやっと届く数字ですから,

これを上回るパート勤務の方というのも多くはないのではないかと思います。

ですので,主婦休損がもらえることになる兼業主婦の方はかなりの人数がいらっしゃるはずです。

 

前回のブログで書かせていただいたように,主婦休損は一般的な休業損害と比べて,事実上かなり有利に取り扱われることがあります。

配偶者やお子さんなど,誰かのために家事業を日常行っているという方で,怪我を負わされたために家事業に支障が出たという方は,

主婦休損を請求する余地がないかどうか一度ご検討されるといいかもしれません。

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