同時廃止

同時廃止というのは、手続が開始と同時に廃止されますという、自己破産手続における用語の1つです。

破産法216条1項には「裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。」という規定があります。

条文を見ると急に難しい話のように感じられますが、誤解を恐れずごく簡単に言い換えると、「裁判所が申立人にめぼしい財産がないと判断したときは、自己破産の開始と終了の決定を同時に出さないといけませんよ」ということになってきます。

自己破産の手続きは、申立人の手持ち財産を調査し、現金化して債権者に分配するという側面も持っています。

調査等を行うのは、裁判所が選任する「破産管財人」となります。

破産管財人は通常弁護士が選任されますが、選任された弁護士も、無償で仕事はできません。

自己破産手続は、裁判所ごとに微妙に実務の運用が異なっていたりしますが、おおむね最低20万円の管財費用はかかるとされているかなと思います。

そして、20万円の管財費用も捻出できない状況であるならば、お金をかけて管財人を選任したところで債権者に分配できるものはないのだから、手続を廃止してしまおう、というのは理にかなっているとも思います。

さて、そうだとすると、めぼしい財産がなければ誰でも同時廃止になるかといえば、実務上はそう単純でもありません。

というのも、自己破産はいわば合法的に借金を踏み倒す手続きであり、裁判所としても、安易に債務の支払義務の免除をする決定を出してしまうと、債権者を害する結果を招きかねません。

通常は、申立て時の資料等から、免責の決定を出しても問題ないと判断できるかどうかも重要な要素となっています。

売り上げや経費の関係等がはっきりしないことが多い個人事業主の自己破産の場合、原則として同時廃止にしない運用をしている裁判所も多いですが、背景には、上記のような実務上の観点がかかわっていたりします。