立証責任。裁判におけるルールの1つとなります。
証明責任、挙証責任等とも呼ばれます。
法律には所定の要件が定められており、要件を満たしているとその効果が発生する、という構造になっているものが多いです。
やや物騒ですがわかりやすいのは刑法199条で、「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。」と規定されています。
「人を殺した者は、」というのが要件、「死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。」というのが効果ですので、条文だけみると非常にシンプルですね。
要件を満たしているかどうかを根拠づけるのが各種証拠で、刑事事件であれば検察側が立証責任を負っており、証拠をそろえ、「人を殺した者は」という要件を満たしているという主張を行うわけです。
これに対して被告人側で反論する弁護士は、要件を満たしていないことを証明するのか、といえばそうではなく、要件を満たしている「と裁判所が判断するには疑いが残る」ところまで持っていくことになります。
裁判所は要するに「白黒つける場」ですので、裁判官は最終的に白か黒かの判断を下さなければなりません。
双方の主張立証を尽くしたところで灰色にしかならないので判断しません、というわけにはいかないのが裁判官の立場として難しいところだなと思います。立証責任こういった場面で機能するもので、「黒と言い切れなければ白と判断するルール」と言い換えることができるかもしれません。
上記の例でいうと、「真っ黒だ!」と証明しなければならない立場にあるのが検察側、「黒とまでは言い切れない!」反論し、裁判官に疑いを持たせるのが弁護側ということになります。
ルールだけでみれば、黒とは限らないというだけだから弁護側有利、ということになりますが、昔ドラマのタイトルにもなっていたように、刑事事件では起訴された事件の9割以上が有罪となっているところですから、実務はそう単純でないということなのかなと思います。