10月、東京は、ようやく長く暑い夏が終わり、朝晩は肌寒く感じます。
さて、交通事故の加害者(A)が、勤務先の会社(B社)の営業車を運転し、仕事中に事故を起こして被害者を死傷させた場合、加害者(A)だけでなく、会社(B社)も、被害者に対して治療費、慰謝料等の賠償金を支払うべき義務を負います。
なぜなら、加害者(A)と会社(B社)は、どちらも、自動車損害賠償保障法に基づき、運行供用者責任を負うからです。
「運行供用者」とは、「自己のために自動車を運行の用に供する者」のことです。
「自己のために自動車を運行の用に供する者」とは、事故を起こした車について「運行支配」と「運行利益」が帰属する者、すなわち、その車の運行を指示・制御すべき立場にあって、その車を運行させることで利益を得る人のことです。
B社は、車の所有者として車を管理・使用し、従業員のAに運行させることによって業務上の利益を得ているため、運行供用者責任を負うのです。
車の所有者(C)が、友人(D)に、無償で車を貸した場合も同様です。
CがDの車を運転中に事故を起こして被害者を死傷させた場合も、Dは、原則として、運行供用者責任を負います。
車を無償で貸す人と借りる人は、通常、密接な人間関係があり、借主が車の返還を約束しているので、貸主は、貸している間も運行支配を失わないと考えられるためです。
他方、Eが所有する車が何者かに盗まれ、何者かがEの車で事故を起こした場合、Eは、運行支配を失っているので、原則として、運行供用責任を負いません。
「運行支配」や「運行利益」は、抽象的な概念なので、実際には、日頃の車の運転状況や管理状況、車の所有者と運転者との関係性、運行支配を失うに至った事情等を考慮して、運行供用者に当たるか否かを決することになります。