自動車を相続した場合

2025年4月になりました。

東京は桜も散って、あったかくなってきましたね。

夜は寒いときもあるので、服のチョイスが難しいですね。

前回は、相続税申告をする際の無道路地の想定通路の取り方について書きましたが、今回は、自動車を相続した場合について書いてみようと思います。

相続税申告は、相続財産を取得した方がその取得した財産の価額に応じて支払うべき税額を算出し、みなし相続財産を含む相続財産の評価額が相続税の基礎控除の範囲を超えた場合に必要になります。

そうすると、相続税申告が必要かどうかは、土地・建物などの不動産、預貯金、上場株式、生命保険金、退職手当金などの相続財産の評価額がいくらかを知るところから始めなければなりません。

被相続人が自動車を使っていた場合は、まずはその自動車の中に保管されている車検証や自動車検査証を確認して、被相続人がこの自動車の所有者かどうかを確認するとよいでしょう。

その際、ローンの有無やローンが残っているかも併せて確認するとよいでしょう。

自動車は一般の動産として相続の対象になります。

そして、自動車の価値は、一般的に、被相続人の相続発生日時点の取引価格で評価します。なお、この価格は、販売価格ではなく、買取価格の相場になります。

評価の方法は、中古車販売業者に査定してもらうか、買取業者のホームページなどで車種や車の状態が近いものの買取価格を調べます。

具体的には、車のメーカー、車名、グレード、年式(初年度登録年月日)、走行距離などの情報が必要ですので、車検証を確認するとこれらの事項がわかると思います。

上記の方法で大体の自動車の評価額が出せるとは思いますが、例外的に調べても買取価格が分からない場合は、相続発生日時点の相続財産である車と同じ種類の新車の小売価額から定率法による償却費を控除する方法で評価額を算出することも可能です。

なお、年式が古く中古車市場でも取引されていないような車であれば、価値がない、つまり評価額を0円とする場合もあります。

相続税申告をする際の無道路地の想定通路の取り方

2025年3月も半ばとです。

もう一年の4分の1が過ぎようとしています。

東京は花粉が大爆発してますね。。

早く花粉がなくなることを祈るばかりです。

前回は、相続税申告における葬儀費用の取扱いについて書きましたが、今回は、相続税申告をする際の無道路地の想定通路の取り方について書いてみようと思います。

相続税申告をするにあたって、相続財産に土地がある場合は、その土地の評価額を出さなければなりません。

財産評価基本通達20-3によると、無道路地とは、道路に接しない宅地(接道義務を満たしていない宅地を含む。)とされています。

以前のブログでも書いたとおり、建物の敷地は、原則として、建築基準法上の道路に2m以上接しなければならないとされています。

そのため、物理的に道路に接していない宅地ではない場合であっても、敷地に接している道が建築基準法上の道路に該当するかどうかがとても重要なポイントとなります。

仮に、敷地に接している道が建築基準法上の道路に該当するとしても、原則として2メートル以上接していない場合は、接道義務を満たしていないため、無道路地と評価されることになります。

無道路地を評価する場合は、想定通路を開設する必要があります。

想定通路は、直径2mの球体を想像して、道路から評価対象地へ入るときに2m幅を確保する、つまり直径2mの球体が想定通路の途中で詰まってしまわないように設定する必要があります。

また、間口が2mなければならないのですが、実際の接道距離と想定整形地の間口距離の短い方が間口距離として採用されることになるので注意が必要です。

かなり専門的な検討が必要になりますので、相続財産である土地が建築基準法上の道路に2m接しているかどうか微妙な場合は、お早めに税理士に相談したほうがよいと思います。

以上

相続税のみなし相続財産について

2025年2月も半ばですね。

2月は短いのであっという間に終わってしまいそうです。

東京は花粉が飛び始めている気がします。

早めに病院で薬をもらってこないとですね。

前回は、相続税申告における葬儀費用の取扱いについて書きましたが、今回は、相続税のみなし相続財産について書いてみようと思います。

金銭的価値があるものはすべて相続財産ですので、相続税の課税対象となります。

反対に、借金などのマイナス財産は、相続税の計算の際に差し引くことができます。

相続税の課税対象となる相続財産の種類としては、まず、土地や建物などの不動産があります。

この不動産には、自宅土地建物だけでなく、貸家、貸宅地、店舗、田畑、山林などがあります。

次に、現金、預金があります。

株式や、投資信託、公社債などの有価証券、貸付金、売掛金などの債権、被相続人が個人事業主の場合は、棚卸資産や一般動産等の事業用財産も相続財産に当たります。

その他、自動車、家具、貴金属・宝石等の家庭用動産や、ゴルフ会員権、電話加入権、特許権や著作権などの知的財産権も相続税の課税対象になる場合もあります。 

注意しなければならない点として、これ以外にも相続税がかかるものがあるということです。

生命保険金、死亡退職金、個人年金など定期金に関する権利などにも相続税がかかります。

これらはみなし相続財産といいます。

みなし相続財産とは、被相続人が直接遺した財産ではないのですが、実質的には相続や遺贈によって取得したことと同様な経済的効果があると認められる財産として、相続財産とみなされるものです。

みなし相続財産である死亡保険金と死亡退職金には、非課税枠が適用される場合があります。

非課税額は「500万円×法定相続人の数」で計算します。

この計算式は、死亡保険金も死亡退職金も同じですし、非課税枠の金額までは相続税の課税対象とはなりません。

さらに、みなし相続財産以外にも、相続税がかかるものがあります。

相続発生時に相続財産として目に見えないものにも相続税がかかるものがあるので、注意が必要です。

相続税申告における葬儀費用の取扱いについて

2025年1月も半ばですね。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

東京はインフルエンザが流行っていますね。。

乾燥もすごいので、加湿とうがいは欠かせませんね。

前回は、無道路地を相続した場合について書きましたが、今回は、相続税申告における葬儀費用の取扱いについて書いてみようと思います。

相続税は、相続財産を取得した方が、その取得した財産の価額に応じて支払うべき税額を算出することになります。

被相続人の相続において、相続財産の合計額が基礎控除額以下であれば、そこまでは相続税が課税されず申告の必要もありません。

基礎控除の金額は、「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されます。

相続税の計算は、 まず、①各相続人の相続税の課税価格を算出します。

次に、②相続税の総額及び各相続人の算出相続税額の計算をします。

最後に、③各相続人の納付すべき相続税額の計算をし、その結果遺産総額が基礎控除の範囲を超えたら相続税申告が必要です。

相続税を計算するときは、一定の相続人や包括受遺者が負担した債務や葬式費用を遺産総額から控除することができます。

葬式費用として控除できるものとして、以下のものが挙げられます。

① 葬式において、火葬、埋葬、納骨をするためにかかった費用を控除することができます。

また、仮葬式と本葬式を行った場合は、その両方にかかった費用を控除することができます。

加えて、医師の死亡診断書作成費用、お通夜や告別式など葬儀に関する飲食代も含まれます。

② 遺体や遺骨の回送にかかった費用も控除することができます。

③ お通夜、告別式などにかかった費用など、葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用は控除することができます。

④ 葬式にあたって、お寺などに対して読経料やお布施などを支払った場合、その費用は控除することができます。

⑤ 遺体の捜索または遺体や遺骨の運搬にかかった費用も控除することができます。

かなり細かい印象を受けるのではないでしょうか?

税理士に相談する際は、支払った葬式関係の資料をまとめて持参して、控除できるものとできないものを仕分けしてもらうほうが効率がよいと思います。

以上

無道路地について

2024年12月に入りました。

今年もお世話になりました。

東京は完全に冬の気温ですね。

体を冷やしたくないので、ももひきが必須ですね。

前回は、面積の広い土地を相続した場合について書きましたが、今回は、無道路地を相続した場合について書いてみようと思います。

相続税申告をするにあたって、相続財産に土地がある場合は、その土地の評価額を出さなければなりません。

無道路地という言葉を聞いた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

財産評価基本通達20-3によると、無道路地とは、道路に接しない宅地(接道義務を満たしていない宅地を含む。)とされています。

物理的に道路に接していない宅地はわかりやすいのですが、以前のブログでも書いたとおり、建物の敷地は、原則として、建築基準法上の道路に2m以上接しなければならないとされています。

そのため、敷地に接している道が建築基準法上の道路に該当するかどうかがとても重要なポイントとなります。

建築基準法上の道路は、建築基準法第42条に定められています。

  • 1号道路:道路法による幅員4m以上の道路(国道・都道府県道・市町村道が該当します。)
  • 2号道路:都市計画法、土地区画整理法等による幅員4m以上の道路(都市計画道路や区画整理による道路、開発道路などが該当します。)
  • 3号道路:建築基準法施行時、または、都市計画区域編入時以前から存在していた幅員4m以上の道
  • 4号道路:都市計画道路等で2年以内に事業が執行される予定で、特定行政庁が指定したもの。
  • 5号道路:位置の指定を受けた幅員4m以上の道路(位置指定道路)
  • 2項道路:建築基準法施行時、または、都市計画区域編入時以前から建築物が立ち並んでいた道で、幅員4m未満の道路

仮に、敷地に接している道が建築基準法上の道路に該当するとしても、原則として2メートル以上接していない場合は、接道義務を満たしていないため、無道路地と評価されることになります。

ただし、各地方公共団体によっては、2メートルの接道では接道義務を満たしていないとしているところもあるので、役所調査をしっかりする必要があるところです。

以上

面積の広い土地を相続した場合

2024年11月に入りました。

東京はそろそろ冬ですね。

これからどんどん寒くなってくるので、衣替えをしなければなりませんね。

前回は、農地の相続税評価について書きましたが、今回は、面積の広い土地を相続した場合について書いてみようと思います。

相続税申告をするにあたって、相続財産に土地がある場合は、その土地の評価額を出さなければなりません。

面積の広い土地を相続した場合は、地積規模の大きな宅地の評価方法が使えないかを検討する必要があります。

地積規模の大きな宅地の評価は、広大地評価の代わりに平成30年に導入された土地の評価方法であり、課税時期が平成30年1月1日以降の場合に適用されます。

地積規模の大きな宅地の評価方法が適用されやすいケースとしては、被相続人が、大きなマンションや団地に居住しており、その敷地の一部を所有している場合が挙げられます。

地積規模の大きな宅地の評価の適用対象を判定するにあたって、国税庁にフローチャートが掲載されていますので、参考にするとよいでしょう。   https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/pdf/chiseki.pdf

以上

農地の相続税評価について

2024年10月に入りました。

東京は急に寒くなりましたね。

風邪が流行っているので、睡眠をしっかり取って免疫力を上げていきたいところです。

前回は、建築基準法上の道路について書きましたが、今回は、農地の相続税評価について書いてみようと思います。

相続税申告をするにあたって、相続財産に土地がある場合は、その土地の評価額を出さなければなりません。

財産評価基本通達では、農地は4種類に区分されています。

具体的には、①純農地、②中間農地、③市街地周辺農地、そして、④市街地農地の4種類です。

被相続人が農地を所有している場合、その農地がどの種類なのか知りたい場合、実務上は倍率表を確認することが多いです。

倍率表に、「純」と記載がある地域は純農地、「中」と記載がある地域は中間農地、「比準」と記載がある地域は市街地農地、「周比準」と記載がある地域は市街地周辺農地ということになります。

純農地と中間農地がある地域に、被相続人所有農地がある場合は、固定資産税評価額に該当する倍率を掛け算して評価額を算出します。

市街地農地と市街地周辺農地がある地域に、被相続人所有農地がある場合は、原則宅地に比準、つまり宅地の相続税評価額を計算するのと同じようにして評価額を算出します。

以上

建築基準法上の道路について

2024年9月に入りました。

少し暑さも落ち着いてきたでしょうか。

東京はゲリラ豪雨が怖いですね。。。

前回は、遺言執行について書きましたが、今回は、建築基準法上の道路について書いてみようと思います。

相続税申告をするにあたって、相続財産に土地がある場合は、その土地の評価額を出さなければなりません。

東京のように旗竿地が多い場所は通路部分の評価が問題になることが多いです。

建物の敷地は、原則として、建築基準法上の道路に2m以上接しなければならないとされています。

そのため、敷地に接している道が建築基準法上の道路に該当するかどうかがとても重要なポイントとなります。

建築基準法上の道路は、建築基準法第42条に定められています。

  • 1号道路:道路法による幅員4m以上の道路(国道・都道府県道・市町村道が該当します。)
  • 2号道路:都市計画法、土地区画整理法等による幅員4m以上の道路(都市計画道路や区画整理による道路、開発道路などが該当します。)
  • 3号道路:建築基準法施行時、または、都市計画区域編入時以前から存在していた幅員4m以上の道
  • 4号道路:都市計画道路等で2年以内に事業が執行される予定で、特定行政庁が指定したもの。
  • 5号道路:位置の指定を受けた幅員4m以上の道路(位置指定道路)
  • 2項道路:建築基準法施行時、または、都市計画区域編入時以前から建築物が立ち並んでいた道で、幅員4m未満の道路

これらのどれに該当するか、または該当しないかを確認するにあたっては、当該土地がある役所に聞くか、役所のホームページなどで指定道路図という地図で確認してみるとよいでしょう。

自分が住んでいる家の道路や実家の土地がどのような道路に接しているか確認してみるのもおもしろいと思います。

遺言執行について

2024年8月も中盤ですね。

みなさまお盆はいかがお過ごしでしょうか。

外出するにも、東京の暑さは異常ですね。。

前回は、遺言の検認手続について書きましたが、今回は、遺言執行について書いてみようと思います。

公正証書遺言がある場合や、自筆証書遺言の検認手続が終わったら、遺言に書かれた内容を実現することになります。

遺言に遺言執行者の指定があればよいのですが、指定がない場合は、基本的に家庭裁判所に遺言執行者の選任申立てをした方が無難な場合が多いと思われます。

遺言執行者は、遺言者の意思を確実に実現し、遺産承継手続を円滑に進める役割を担っています。

遺言執行者に選任された場合、基本的には、以下の流れで執行手続を進めていきます。

①遺言書の存在を確認する。

②遺言書が有効かどうかを検討する。

③遺言に書いてある内容を解釈し、遺言執行が必要かどうかを検討する。

④相続人、受遺者、受贈者の調査をする。

⑤遺言執行者の就任通知をする。

⑥自筆証書遺言の場合は検認申立てをする。

⑦相続財産調査をし、遺産目録を作成する。

⑧遺言執行をする。

執行手続は、慣れていないと手間がかかりますし、相続人同士それほど仲が良くなく協力を得にくい場合もありますので、遺言執行は弁護士にご依頼いただいたほうがよいことが多いと思います。

遺言執行者に指定された場合や、これから遺言を書く方は、まずは弁護士に相談されるとよいと思います。

遺言の検認手続について

2024年ももう7月に入りました。

東京は猛暑ですね。。

銀座の事務所の前が昭和通りでして、信号待ちの時間に汗だくになってしまいますね。

梅雨の湿度と相まって生活に支障が出るレベルです。

前回は、相続税申告における生前贈与加算について書きましたが、今回は、遺言の検認手続について書いてみようと思います。

このブログを読んでいただいている皆様は、昨今、生前の対策として、遺言を作成しておくことが大事であることはご存知だと思います。

私は、基本的に、公正証書遺言の作成をお勧めしておりますが、様々な相続案件のご相談いただく中で、自筆証書遺言を作成されている方も一定するおられると感じます。

自筆証書遺言については、基本的に、法務局で保管されていたもの以外は検認手続を行わなければ相続の手続を行うことはできないこととなっています。

検認手続は、遺言書の有効無効を確認する手続ではなく、現在の遺言書の状況を保存する手続です。

検認の申立てに必要な書類には、①検認の申立書、②被相続人の出生から死亡までの戸籍、③相続人全員の現在戸籍、④800円の収入印紙及び ⑤郵便切手があります。

検認手続は、一般的に以下の流れで進んでいきます。

①検認期日に家庭裁判所に行くと、担当書記官が審判廷に案内してくれます。

②審判廷で、裁判所が期日の出頭者を確認した後、検認の手続が始まります。

相続人でない方は審判廷には入れないのが原則です。

③遺言書原本を裁判所に提出し、開封されていない遺言書は裁判所で開封します。

④裁判官が、申立人に、

・遺言書を発見したのか、預かったのか。

・発見または預かった時期はいつ頃か。

・発見または預かった場所はどこか。

・遺言書、封筒の文字は遺言者のものか。

・遺言書や封筒の印鑑は遺言者の印鑑か。

・その印鑑が実印かどうか。

といったことを質問します。

⑤次に、裁判官が、相続人に、遺言者の文字や印鑑についての質問をします。

⑥その後、書記官が遺言書に証明書をつけて申立人に返還します。

以上のような流れで、検認手続は進んでいきます。

検認手続が無事終われば、遺言を執行する手続へと進めます。

遺言にまつわるトラブルは多いため、検認手続から弁護士にご依頼いただいたほうがよい事案は少なくないところです。

お気軽にご相談ください。

相続税申告における生前贈与加算について

2024年ももう6月ですね。

一年の半分が過ぎようとしています。

東京もかなり暑くなってきて湿度が上がってきましたね。

5月に、弁護士法人心銀座法律事務所に異動して1か月が過ぎました。

宝町や京橋の雰囲気にだいぶ慣れてきましたが、美味しそうなお店が多いですね。

前回は、生前対策として遺言を選択すべきか、信託契約を選択すべきかについて書きましたが、今回は、相続税申告における生前贈与加算について書いてみようと思います。

自分の親などが亡くなった場合に、相続人が亡くなった被相続人から生前に贈与を受けていたということは、一定数あるのではないかと思います。

この生前贈与について、相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人が、被相続人死亡前3年以内に受けたものについては、被相続人の相続財産に加算して相続税の計算をする必要がありました。

これが、令和5年度税制改正で、一部例外はありますが、被相続人死亡前7年以内の生前贈与まで対象となることになりました。

この改正は、令和6年1月1日以後の贈与について適用されます。

令和6年に入って半年が過ぎようとしておりますので、この改正後に贈与をした方もいるのではないでしょうか。

一度整理をしておきたいと思います。

①被相続人の相続開始日が令和8年12月31日までの場合

→加算対象期間は、相続開始前3年以内となります。

②被相続人の相続開始日が令和9年1月1日~令和12年12月31日までの場合

→加算対象期間は、令和6年1月1日から相続開始日までの間

③被相続人の相続開始日が令和13年1月1日以降の場合

簡単な整理ではありますが、参考にしていただければと思います。

遺言か信託か

2024年も気が付いたら5月ですね。

東京も花粉が落ち着いて、過ごしやすい季節になってきましたね。

ゴールデンウイークはいかがでしたでしょうか。

私は、弁護士法人心東京法律事務所に所属していたのですが、この度新たに弁護士法人心銀座法律事務所が開所いたしまして、現在銀座法律事務所に異動いたしました。

引越しは本当に大変ですね。。

体力勝負でしたが、何とか無事に引っ越すことができました。

今後ともよろしくお願いいたします。

前回は、相続税を払いすぎてしまった場合について書きましたが、今回は、生前対策として遺言を選択すべきか、信託契約を選択すべきかについて書いてみようと思います。

家族信託という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。

最近かなり浸透してきたように思います。

生前対策といえば、真っ先に思いつくのは遺言の作成ですが、遺言作成の経緯によっては、相続発生後に激しい争いになることがあります。

遺言は民法で形式的な要件が決まっているため、この要件を満たさなければ無効となってしまいます。

これに対して、信託は、信託法はありますが、基本的には信託契約という契約なので、委託者と受託者の合意に基づくものであり、柔軟性が高いといえます。

生前に遺言を何度も何度も書き直していた被相続人の相続人の方から、遺言無効に関するご相談をいただくことも多いです(もちろん遺言作成の経緯によるところではあります。)。

このような事案に接すると、あらかじめ遺言の書き直しにもある程度対応できるようしっかりと検討した上で信託契約を組成した方が良い場合もあるような気がします。

民事信託は遺言作成に比べて複雑な印象をお持ちの方も多いかと思いますが、ご相談窓口は多くなっている印象ですので、ぜひご検討されると良いのではないかと思います。

相続税を払いすぎてしまったら

2024年ももう4月ですね。

東京もかなり暖かくなってきました。

そろそろお花見のシーズンですね。

前回は、二次相続の対策について書きましたが、今回は、相続税を払いすぎてしまった場合について書いてみようと思います。

相続税は、相続人が自ら納税すべき金額の計算を行い、税金を納付し、税務署はその計算が適切かどうかを後から審査をします。

もし相続税を過剰に納付したとしても、税務署が自主的に返還してくれることはありません。

税務署は税金を納めすぎてしまったとしても教えてはくれませんので、相続人が税金を払い過ぎたことに気づかずにいたり、払いすぎた税金の還付を求める更正の請求をしないと、払い過ぎた税金はそのまま返ってきません。

もし、相続税を本来支払うべき金額よりも多く納付してしまった場合、返金してもらうことはできないのでしょうか。

このような場合のために、相続税の還付の制度が設けられています。

ただし、還付の制度を利用するとしても手間はかかりますので、当初申告の際に、できるだけ土地の評価額を正確に計算するなどして、相続税の計算をしっかりと行うことが重要だと思います。

やはり、相続発生後、相続人調査、相続財産調査、相続財産評価をしっかりと行い、正確な相続税の計算をして、適正な金額を納税するのが理想です。

二次相続について②

2024年ももう3月ですね。

東京は、乾燥と花粉が厳しいですね。

睡眠をしっかりとって、免疫力を高めていきたいところです。

前回は、二次相続の対策について書きましたが、今回も、二次相続の対策について書いてみようと思います。

前回のブログでは、相続財産が多くなればなるほど適用される相続税率が高くなり支払うべき相続税が高くなるため、一次相続と二次相続の両方に相続税申告が必要そうな場合、原則として、二次相続まで考慮して相続税対策を検討した方がよいとご説明いたしました。

今回は、二次相続でどのような点に気をつけるべきかということを書いてみたいと思います。

二次相続で気を付けたい点として、まずは、①二次相続では、そもそも相続人の中に配偶者がいないため、配偶者の税額軽減の特例は利用できないということが挙げられます。

次に、②一次相続に比べて、少なくとも法定相続人が1名減っているため、基礎控除の金額が600万円減ることになります。

さらに、③二次相続における被相続人が自宅の土地等を有していた場合、一次相続の土地の利用状況と変化がある場合は、小規模宅地の特例の要件を満たさず、土地の評価減ができなくなる可能性があります。

そのため、このあたりに配慮した対策をする必要があるということになります。

二次相続まで考慮した一次相続における相続税対策としては、以下の点が挙げられるかと思います。

①一次相続における被相続人の配偶者が多額の自己固有の財産を持っている場合などは、配偶者があまり相続財産を取得せずに、子に多めに相続させるほうがよいでしょう。

②一次相続で子が小規模宅地の特例を利用できる状況の場合は、配偶者ではなく、その子が土地を取得する方がよいでしょう。

③配偶者が一次相続で現金や預金を取得した場合は、その現金や預金を使って生命保険契約に加入することで、生命保険の非課税の恩恵を受けつつ、二次相続における納税資金を確保するとよいでしょう。

④二次相続において小規模宅地等の特例を利用できるようにするため、土地を取得する予定の子は親との同居などについて検討しておくとよいでしょう。

⑤二次相続のメリットを享受し、デメリットを避けるため、一次相続の発生前に、遺言書を作成しておくとよいでしょう。

二次相続の対策について

2024年が始まり、もう12分の1が終わってしまいました。

東京はかなり寒くなってきましたね。

お湯を飲んで、胃腸を冷やさないように気をつけたいところです。

前回は、所在等不明共有者持分取得手続について書きましたが、今回は、二次相続の対策について書いてみようと思います。

相続税は、相続財産を取得した方が、その取得した財産の価額に応じて支払うべき税額を算出することになります。

相続税申告が必要かどうかの判断をする際、非常に重要なものに「相続税の基礎控除」という制度があります。

被相続人の相続財産の合計額がこの基礎控除額以下であれば、そこまでは相続税が課税されず申告の必要もありません。

基礎控除の金額は、「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されます。

ここまでは、みなさんご存知の方も多いのではないでしょうか。

一般的に、ご両親が連続で亡くなった場合で、子の立場から見て、最初に亡くなった親の相続について一次相続といい、次に亡くなった親の相続については二次相続といいます。

例えば、父、母、子2名の家族で、父が最初に亡くなった場合を一次相続といい、その後、母が亡くなった場合を二次相続といいます。

相続財産が多くなればなるほど適用される相続税率が高くなり支払うべき相続税が高くなりますので、一次相続と二次相続の両方に相続税申告が必要そうな場合、原則として、二次相続まで考慮して相続税対策を検討した方がよいでしょう。

一次相続では、相続人である配偶者である母が、配偶者の税額軽減の特例を利用することができます。

この配偶者の税額軽減の特例とは、配偶者の取得する相続財産が1億6000万円以下または法定相続分以下であれば相続税が0円になるというものです。

そのため、一次相続では配偶者が多めに相続財産を取得して相続税額を低くするという考え方もあるかと思います。

この場合は、配偶者が相続税額0円となるのに対し、子は取得した相続財産の額に応じて相続税を支払うことになります。

そうすると、一次相続では相続財産が少なくなるのですが、この後すぐに配偶者が亡くなってしまった場合などは、二次相続で子に多額の相続税がかかる可能性があります。

この点をどう考えるかが重要です。

次回も二次相続について考えてみたいと思います。

所在等不明共有者持分取得手続について

今年もあと残すところ3日です。

東京は気温が安定しませんね。

乾燥がひどく、喉をやられている人が多いようですので気をつけて年末年始を過ごしたいところです。

今年は相続の紛争案件だけでなく、たくさんの相続税申告のご依頼をいただきました。

ありがとうございました。

前回は、相続税申告と相続時精算課税の関係について書きましたが、今回は、所在等不明共有者持分取得手続について書いてみようと思います。

この手続は、令和3年の民法改正でできたもので、共有状態にある土地や建物といった不動産について、共有者が、他の共有者が誰か分からない場合や、どこに住んでいるか所在が分からない場合に、裁判所に対し、この他の共有者(「所在等不明共有者」といいます。)の持分を申立人に取得させる旨の裁判を求める手続です。

所在等不明共有者がいる場合、不動産の管理や変更の意思決定ができなくなってしまいます。

そうすると、所在等不明共有者以外の共有者はこの共有不動産を塩漬けにすることになりかねず、非常に困った事態になってしまいます。

そこで、裁判所の決定によって、共有不動産の管理や変更の意思決定ができるようにする手続が作られました。

また、このような場合に、強制的に所在等不明共有者の共有持分を他の共有者が買い取ることができる手続もできました。

ただし、相続によって、所在等不明共有者の持分が共同相続人の間で遺産分割の対象となる相続財産に属する場合(これを「遺産共有」といいます。)、相続開始から10年経過していることが必要ですので、注意が必要です。

この手続において、裁判所は、所在等不明共有者の持分の時価相当額を考慮して供託金の額を定めて、申立人がこの金額を供託する必要があります。

申立人側に負担もあるのですが、上手に利用すれば、不動産が塩漬けになることを避ける有用な手段となると思います。

まだ新しい制度ですが、徐々に裁判所の運用も固まってくるかと思います。

相続税申告と相続時精算課税の関係

2023年11月も最終日ですね。

今年もあと残すところ1か月です。

東京も急に寒くなってきて、乾燥してきましたね。

内臓を冷やさないように気をつけたいところです。

前回は、相続税の更正の請求について書きましたが、今回は、相続税申告と相続時精算課税の関係について書いてみようと思います。

相続税は、相続財産を取得した方が、その取得した財産の価額に応じて支払うべき税額を算出し、相続が発生したことを知った時から10か月以内に行う必要があります。

相続税申告におけるルールの中に生前贈与に関するものがいくつかあるのですが、そのうちの一つに、相続時精算課税に関するものがあります。

相続時精算課税制度とは、贈与税に関する制度の一つで、60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子・孫への贈与について、総額2500万円までの贈与にかかる税金を相続時まで先送りにすることができる制度です。

相続時精算課税を使う際、贈与する財産の種類に制限はなく、現金でも不動産でもよいとされていますし、贈与の回数に制限はありません。

相続時精算課税制度を利用すると、生前贈与をしても2500万円までは贈与税は発生しないことから、親の生前対策として利用している方が少なくないという印象です。

ただ、相続税申告のご依頼をいただく中で、自分が親から土地や現金の贈与を受けたという記憶や認識はあるのですが、相続時精算課税制度を利用したかどうかはわからないという方が散見されます。

贈与者である親が子に代わって贈与税の申告と相続時精算課税の届出をして、そのことを受贈者である子に説明していないケースがその典型かと思います。

その後、親の相続が発生して、相続税申告をした後、税務署の指摘を受けて初めて、自分が受贈者として相続時精算課税を利用していたことを知るということになるわけです。

相続時精算課税利用分が申告漏れになるため、過少申告加算税や延滞税が生じる可能性があるため、注意した方がよいポイントと言えるでしょう。

相続税の更正の請求について

2023年10月も終わってしまいました。。

今年もあと残すところ2か月となってしまいました。

時間が経つのは本当に早いですね。

東京はそろそろ衣替えの時期になりました。

前回は、養子縁組と相続税の関係について書きましたが、今回は、相続税の更正の請求について書いてみようと思います。

相続税は、相続財産を取得した方が、その取得した財産の価額に応じて支払うべき税額を算出し、相続が発生し、そのことを知った時から10か月以内に行う必要があります。

ところが、相続税の当初申告後に、申告内容の誤りや申告後の状況の変化などにより相続税を払い過ぎてしまうこともあるかと思います。

例えば、相続税の当初申告後に相続財産評価が間違っていたことが発覚したり、遺留分侵害額請求を受けて申告期限後に遺留分侵害相当額を支払った場合などが考えられます。

このような場合に対処するための手続として、「更正の請求」というものがあります。

この更正の請求手続を取ることで、払い過ぎた相続税を還付してもらうことができます。

ただし、更正の請求には期限があるので注意が必要です。

原則として、更正の請求ができる期限は、相続税の申告期限から原則5年です。

例外として、未分割申告後に遺産分割協議が成立し小規模宅地の特例や配偶者控除の特例を適用した場合、相続人の廃除などにより相続人の人数が変わった場合、遺留分侵害額請求を受け遺留分侵害相当額を支払った場合、当初申告後に遺言書が発見され自己の取得する相続財産が減った場合などの後発的な理由による場合は、5年を過ぎていても更正の請求をすることができます。

この場合は、上記のような特別な事情が発生した日の翌日から4か月以内に更正の請求をしなければならないので注意が必要です。

養子縁組と相続税

あっという間に2023年9月も終わってしまいました。。

東京はだいぶ涼しくなってきましたね。

前回は、相続税の連帯納付義務について書きましたが、今回は、養子縁組と相続税の関係について書いてみようと思います。

相続税は、相続財産を取得した人が、その取得した財産の価額に応じて支払うべき税額を計算します。

ただし、相続税には基礎控除が定められているので、相続財産が基礎控除の額の範囲内であれば、相続税申告が不要です。

相続財産が基礎控除の額の範囲内の場合は、相続税を支払う必要はありません。

他方、基礎控除額を超える相続財産がある場合は、原則として相続税の申告と納税が必要になります。

相続税の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」で計算します。

つまり、法定相続人が1人増えれば、600万円の基礎控除額が増えるということになります。

養子縁組というのは、血縁関係がない人とも親子関係を発生させる制度をいいます。

養子縁組をすることで、養子は実子と同じように養親の法定相続人となりますので、相続権を有することになります。

養子縁組を行って法定相続人を増やすことによって、相続税の基礎控除額が増えますので、この点が相続税対策としてメリットがあることになります。

また、養子縁組のメリットとして、相続が発生したときの生命保険金の非課税枠が増えるということが挙げられます。

生命保険金や死亡退職金にも非課税枠があり、その非課税枠は、「500万円×法定相続人の人数」で計算します。

養子縁組を行って法定相続人を増やすことによって、相続税の生命保険金や死亡退職金の非課税枠が増えますので、この点が相続税対策としてメリットがあることになります。

もっとも、養子縁組をすることで基礎控除額が増えたり、生命保険金や死亡退職金の非課税枠が増えるのですが、無限に人数を増やせるわけではありません。

相続税法上では法定相続人が増える人数には制限がかけられています。

被相続人に実子がいる場合は、養子が法定相続人としてカウントされるのは1名だけです。

また、被相続人に実子がいない場合には、2名の養子までが法定相続人として認められることになっています。

養子を無限に増やして相続税対策ができるわけではないことに注意が必要です。

相続税の連帯納付義務について

あっという間に2023年8月も終わりですね。。

東京もまだまだ暑いですね。

そろそろ夏の疲れが出てくるので、注意して生活したいところです。

 

前回は、相続税申告における書面添付制度(税理士法第33条の2)について書きましたが、今回は、相続税の連帯納付義務について書いてみようと思います。

相続税は、相続財産を取得した人が、その取得した財産の価額に応じて支払うべき税額を計算します。

相続税の申告期限は、通常は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。

この申告期限内に、相続財産を取得した人が、自分が取得した財産の価額に応じて、それぞれ相続税を納付することになります。

それでは、相続人等の中に相続税を納付しない人がいた場合、どうなるでしょうか。

みなさまの中には、自分が相続で取得した分の相続税を支払えば何の問題もないのでは?、とお考えの方も多いのではないでしょうか。

相続税には、連帯納付義務といって、各相続人がお互いに連帯して納付しなければならないというルールがあります。

そのため、自分が取得した財産に課税される相続税ではないにもかかわらず、これを利子税とともに納付しなければならなくなる可能性があります。

このような義務があることにとても驚かれる方も多いのではないでしょうか。

それでは、相続税の連帯納付義務がある人はどのような人でしょうか。

まず、被相続人から相続または遺贈により、みなし相続財産を含めた財産を取得した人が、連帯納付義務を負うことになります。

また、被相続人から生前贈与を受け、相続時精算課税制度を利用していた人も、連帯納付義務の対象に含まれるので注意が必要です。

他方で、家庭裁判所で相続放棄をした場合は、連帯納付義務を免れることになります。

ただし、相続放棄をしても、被相続人の死亡保険金や死亡退職金は指定受取人の固有の財産として受け取ることは可能ですので、受け取った死亡保険金や死亡退職金は、連帯納付義務の対象となります。

相続人の中に相続税を支払わなさそうな人がいる場合は、対策を考えておいた方がよさそうです。