司法取引と弁護士の役割
1 司法取引とはどのような制度か
司法取引は,被疑者,被告人が検察官に対して,他人の刑事事件の解明に役立つ話をして,その見返りとして,罪を軽くしてもらうという制度です。
司法取引で想定されるのは,例えば,組織的な犯罪において,検察官が末端の者に罪を軽くすることを約束して,上層部の犯罪に関する話をさせるといった使い方です。
2 司法取引のメリットとデメリット
司法取引の大きなメリットは,密行性の高い組織的犯罪において,上層部を処罰しやすくなることです。
薬物や銃器の密売といった,秘密裏に行われる組織的な犯罪については,通常は証拠が少なく,上層部を処罰することが難しいです。
しかし,組織の末端の者から証言が得られれば,それが上層部を処罰できる可能性が高まります。
そのため,司法取引をすることによって,上層部を処罰しやすくなるというメリットがあります。
しかし,司法取引の大きなデメリットとして,虚偽供述によって冤罪が生まれやすくなる可能性があります。
司法取引をすると罪が軽くなるので,被疑者,被告人が,自分の罪を軽くするために虚偽供述をして,関係のない他人を巻き込む危険があります。
3 司法取引における弁護人の役割
虚偽供述による冤罪の可能性を減らすため,司法取引をする際には,協議の開始から合意の成立,不成立まで,弁護人が関与することが法律上義務付けられています。
被疑者,被告人は,弁護人から司法取引をすることのメリット,デメリットの説明を受けた上で,検察官と協議することになります。
弁護人としては,司法取引をすることが被疑者,被告人にとって有利になるかどうかだけでなく,被疑者,被告人が他人を巻き込むために虚偽供述をしているかどうかも慎重に見極める必要があります。