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弁護士が交通事故で用いる「赤い本」と「青本」

  • 文責:所長 弁護士 石井浩一
  • 最終更新日:2022年9月21日

1 赤い本とは

赤い本とは、財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」という書籍の通称です。

表紙が赤いことから、「赤い本」と呼ばれています。

上巻の基準編と下巻の講演録編とがセットとなっており、毎年2月に改訂版が発行されています。

赤い本は、東京地方裁判所における裁判実務に基づき、交通事故における損害賠償額の算定基準について解説し、参考となる裁判例を掲載しています。

特に東京圏での交通事故の裁判において、裁判官や弁護士が、必ずと言っていいほど参考にする書籍です。

2 青本とは

青い本とは、財団法人日弁連交通事故相談センターが発行している「交通事故損害額算定基準」という書籍の通称です。

表紙が青いことから、「青本」または「青い本」と呼ばれ、隔年で改訂版が発行されています。

青本は、交通事故における損害賠償額の算定基準について解説し、日本全国を対象として、参考となる裁判例を掲載しています。

3 赤い本と青本の活用方法

赤い本や青い本は、治療費、交通費、休業損害、後遺症・死亡による逸失利益、傷害・後遺症・死亡による慰謝料、物損等、損害項目ごとに算定基準を解説し、また、過失割合、損益相殺、減額事由等、損害額を算定する上で考慮されるべき事項についても解説しています。

交通事故の裁判では、赤い本や青本の算定基準を用いて、損害額の算定がなされることが一般的です。

東京地方裁判所及びその周辺の裁判所では、通常、赤い本の算定基準を用いて計算がなされています。

赤い本の下巻に掲載されている裁判官等の講演録では、交通事故における損害賠償に関するさまざまな課題について論じられており、講演録が裁判実務へ与える影響力は大きいといえます。

他方、青本は、全国を対象としており、交通事故の損害賠償について、体系的・理論的な考察がなされており、損害賠償論についての理解を深めるためにも適しています。

このように、交通事故の裁判では、赤い本や青本が重視されますが、これらに掲載されている算定基準は、あくまで一例という位置づけでであって、唯一絶対の基準ではありません。

そのため、個別の事件ごとの諸事情に応じて変わり得る可能性があることには、留意する必要があります。

参考リンク:公益財団法人 日弁連交通事故相談センター・青本及び赤い本

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交通事故被害者が赤い本や青本の基準で損害賠償を受けるには

  • 文責:所長 弁護士 石井浩一
  • 最終更新日:2022年11月7日

1 赤い本・青本に違いはあるのか

赤い本・青い本は、どちらも基本的には過去の裁判例の蓄積により書かれている書籍ですので、大きく異なることはありません。

あえて言えば、赤い本は解説が少なく、過去の裁判例の紹介に紙面の多くが割かれているのに対し、青本は体系的な説明に関してもある程度の比重が割かれているというところでしょうか。

従って、弁護士等ではなく、一般の方が読まれる際には、青本の方がとっつきやすいかもしれません。

また、慰謝料等について、赤い本は「○○円」というように一定の額を記載してあることが多いのですが、青本は「○○円~○○円」というように、幅のある記載がなされていることが多いです。

従って、青本に準拠して示談交渉等をすると、柔軟な解決が可能である上に額も多くを望めることがあるのですが、双方の折り合いをつけるのに時間がかかる可能性があります。

この点、赤い本に準拠するのであれば、例えば、通院〇か月の場合の通院慰謝料は「○○円」というように一定の額が記載されておりますので、早期に話し合いに決着がつくことが期待できます。

2 自分で示談交渉をしても赤い本・青本で賠償を受けられるのか

赤い本・青本はいわゆる「裁判基準」といわれるものであり、裁判をした場合に裁判官が認定するであろう賠償額の目安です。

従って、自分で示談交渉をしても、基本的には裁判基準では支払われないことになります。

示談交渉の場合、保険会社は自賠責基準、あるいは任意保険基準で慰謝料を提示してきます。

もっとも、弁護士に依頼し、弁護士が交渉する場合には、裁判基準に準じた賠償額となることが多いです。

弁護士が出てきている以上は、示談交渉とはいえ、裁判に発展する可能性が高くなっているためでしょう。

ここに、示談交渉だけでも弁護士に依頼するメリットがあります。

3 弁護士に依頼すれば必ず赤い本・青本のとおり慰謝料を獲得できるのか

それでは、弁護士に依頼しさえすれば、必ず赤い本・青本のとおり慰謝料を獲得できるのでしょうか。

これは、事案によって異なります。

例えば、通院慰謝料は、赤い本・青本は概ね週2回程度通院していることを念頭において記載されております。

従って、症状にもよりますが、通院のペースがこれよりも大幅に下回る場合などは、赤い本・青本の基準から何割かカットされた慰謝料となる場合があります。

また、物損が軽微であり、事故と受傷との因果関係が疑問視された場合なども同様です。