治療費の被害者請求のメリットとデメリット
1 治療費の被害者請求は必要か
交通事故により負傷して治療すると治療費が発生しますが、事故の被害者であれば、加害者が加入する任意保険会社が直接病院に支払ってくれることが一般的です。
加害者の任意保険会社は、被害者に治療費を含む賠償金を支払った後、加害者が加入する自賠責保険会社に対し、支払い済みの限度で保険金を請求します。
このような手続きは、「一括対応」とか「一括払い」と呼ばれています。
「被害者請求」は、被害者が加害者の自賠責保険会社に対し、治療費、休業損害、慰謝料等の賠償金を直接請求するものです。
加害者の任意保険会社が一括対応する場合、被害者は、治療費を自己負担することなく治療を受けることができるので、被害者請求する必要はありません。
2 治療費の被害者請求のメリット
被害者にも過失があり、その過失が30%を超えるような場合、事故の相手が加入する任意保険会社は、通常、一括対応しません。
また、加害者の任意保険会社は、自賠責保険会社が保険金を支払わないおそれがあると判断する場合、一括対応を拒否することがあります。
一括対応しない場合や人身傷害保険等ご自分の保険を使うことができない場合、被害者は、被害者請求することにより、自賠責保険会社から自己負担した治療費等の支払いを受けることができます。
また、症状が続いているにもかかわらず、早期に一括対応を打ち切られた場合に被害者請求することにより、自賠責保険会社から打切り後の治療費の支払いを受けるケースもあります。
3 治療費の被害者請求のデメリット
被害者請求する場合、被害者が医療機関等に治療費を支払うことは、症状の程度や治療の内容によっては、被害者にとって経済的に大きな負担となります。
また、自賠責保険金の傷害部分の上限額は120万円です。
これは、治療費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料等をすべて合計した上限額です。
そのため、入院や手術、長期の通院をして治療費が高額になったり、加害者の任意保険会社から休業損害の一部を受け取る等した場合、120万円を超える部分は、一切の支払いを受けることができません。
また、被害者請求により自賠責保険会社が支払う治療費は、事故による損害に限られています。
そのため、事故と傷害との因果関係がない、過剰な治療である等の理由から事故による損害と認められない場合は、治療費の支払いを受けることができません。
このようなデメリットもあるため、治療費の被害者請求をするか否かは、慎重な判断が求められます。