弁護士の受任義務について
1 弁護士には受任拒否の自由がある
医者は医師法第19条で受任義務が定められているため、正当な自由なしに診療を拒絶することができないということは比較的知られているかと思います。
また、司法書士、行政書士についても同様に、受任義務があります。
他方で、弁護士については受任拒否の自由が認められています(つまり、受任義務がありません。)。
弁護士の受任拒否の自由は、他の資格にはない特別なものなので、一般の方からすると「なぜ?」と思われることもあるかもしれません。
2 弁護士が受任を拒否する場合
どのような場合に受任を拒否していいか、が決まっているわけではないので(自由に受任を拒否できるので)、受任を拒否するケースを類型化することは難しいですが、以下のようなものがあります。
まず、弁護士の思想信条に反するものが考えられます。
例えば、消費者問題に熱心な弁護士が、企業側に立って消費者を相手取る事件は扱わない、というのは感覚的にもわかるかと思います。
次に、その分野を取り扱ったことがないようなケースが考えられます。
事件の難易度が上がるほどその傾向があると思いますが、弁護士がその分野を一から勉強しないといけないような事件の場合は、受任しないことが普通でしょう(慣れた弁護士に依頼する方が依頼者のためでもあるといえます。)。
また、弁護士も当然報酬を受け取って経営・生活を成り立たせているので、赤字になるような案件は受けることが難しいです。
3 信頼関係が築けるかどうか
弁護士に依頼して事件を解決するためには、依頼者と弁護士が相互に信頼できていないと難しいです(そもそも弁護士と取り交わす「委任契約」は相互信頼関係を基礎として成り立つものです。)。
依頼者が弁護士を選ぶにあたっては、最終的にその弁護士を信用できるかどうかをポイントにすべきだと思いますが、弁護士の側からしても依頼者を信用・信頼できなければ依頼を受けることは難しくなってきます。
お互いに信頼し、事件の解決に進んでいくという状態は、依頼者にとっても理想だと思いますが、弁護士にとっても理想なのです。