相続で相談する際の専門家
1 相続に関わる専門家
相続に関わる主な専門家としては、弁護士、行政書士、司法書士を挙げることができます。
税金の問題がある場合には、相談すべき専門家に税理士が加わることとなります。
このように、相続の場面では様々な専門家が関わってきます。
以下では、どのような専門家に相談すべきかについて、場合分けをして説明したいと思います。
2 遺産の内容次第で相談すべきこと
相続では、遺産の内容次第で、様々な手続きを行う必要があります。
そして、手続きの内容次第で、相談すべき専門家も異なってきます。
⑴ 遺産を相続する場合に共通して行わなければならない手続き
被相続人から遺産を相続する場合には、被相続人の預貯金、不動産等の個々の財産について引き継ぎを行う必要があります。
不動産については名義変更を行わなければいけませんし、預貯金についても解約・名義変更をしないといけません。
不動産に農地が含まれている場合には、農地法の規定による届出を行う必要もあります。
これらの手続きは、それぞれ窓口となるところが異なります。
不動産については法務局で、預貯金については各銀行で手続きを行う必要があります。
農地法の規定による届出については、各地の農業委員会で手続きを行います。
このように、個々の財産によって行うべき手続きが異なりますので、関与する専門家も異なってくることとなります。
司法書士は、基本的には不動産の名義変更の手続きを行いますので、相続の際には、相続に伴う不動産の名義変更等を行いますが、預貯金の解約・名義変更の手続きをする方もいます。
行政書士は、基本的には地方公共団体への許認可を行いますので、相続の際には、農業委員会への届出等を行いますが、書類作成の一環として、預金の解約・名義変更等に関与する方もいます。
弁護士は、どのような法的問題についても関与することができますが、中には、不動産、預貯金の手続きについては一切関与しない方もいます。
⑵ 遺産総額が大きい場合に行わなければならない手続き
遺産総額が大きい場合には、相続税の課税対象になり、相続税を納付しなければならない可能性が出てきます。
具体的には、遺産の課税価格の合計額が「3000万円+600万円×法定相続人数」を超える場合には、基本的には、相続税の申告を行わなければなりません。
この場合には、相続開始を知った日から10か月以内に、税務署に相続税の申告書を提出し、かつ相続税を納付する必要があります。
相続税申告を行う場合には、専門家としては、税理士が関与することとなります。
ですから、相続税申告については、税理士に相談すべきであることとなります。
⑶ 負債が多い場合に行わなければならない手続き
被相続人の負債が多い場合には、相続放棄を検討することがあります。
相続放棄を行うことにより、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も引き継がないこととなり、被相続人の負債の返済をしなくても済むこととなります。
相続放棄については、基本的には、相続開始を知った日から3か月以内に、家庭裁判所において、相続放棄の申述書を提出する必要があります。
相続放棄は家庭裁判所で行わなければならない手続きになりますので、法律の専門家である弁護士が関与しますが、書類作成の一環として、司法書士、行政書士が関与する場合もあります。
相続放棄については、書類作成のみであれば、弁護士、司法書士、行政書士のいずれかに相談することとなりますが、法律問題についての助言を受けたい場合には、弁護士に相談すべきです。
3 相続人の関係次第で相談すべきこと
⑴ 相続人の関係が円満であり、意見対立が存在しない場合
相続人の関係が円満であり、意見対立が存在しない場合には、相続人全員の合意のもと、遺産分割協議書を作成することが可能です。
このような場合には、専門家が関与するとしても、書類作成にとどまることとなりますので、弁護士、司法書士、行政書士のいずれかに相談することとなります。
⑵ 相続人間の関係が円満ではなく、意見対立が大きい場合
相続人間の関係が円満ではなく、意見対立が大きい場合には、それぞれの相続人の意見を調整する必要があります。
このような場合には、法的知識に基づいて調整が行われることが多いため、法律の専門家である弁護士に相談すべき場合が多いです。
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